労働者教育協会のブログ

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労働者教育運動をめぐる情勢の特徴~総会方針より 国際情勢⑤平和の発信地域としての東アジア

(5)平和の発信地域としての東アジア

 日本の平和の問題は、アジアのなかで考えることが大切です。アジアには、2005年、中国やロシアを含めたASEAN東南アジア諸国連合)を中心とする外交の場である東アジアサミット(EAS)が創設されています。ASEAN10か国に、アメリカ、中国、日本、韓国、ロシア、ニュージーランド、オーストラリア、インドの8か国、合わせて18か国による包摂的な外交の枠組みです。ASEANは、この東アジアサミットを発展させ、この地域を戦争の心配のない平和の共同体にするという大きな構想を推進しようとしています。それがASEAN首脳会議で2019年に採択された「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)です。AOIP 構想の主な特徴は、特定の国を敵視し、排除するのでなく、関係する全ての国を包摂する  対話と協力の地域」をめざす平和システムにあります。重要なことは、このAOIP構想を米国、中国、EU、日本など多くの国が支持していることです。しかし、日本はアメリカ、オーストラリアとともにインドを巻き込み、事実上の中国包囲網である「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)を推進し、ASEAN主導のAOIPを形骸化させる動きを強めています。

 いま、日本に求められるのは、アメリカに従って、戦争の準備をすることではなく、ASEANと連携し、AOIP構想の実現など平和の準備に全力をあげることです。アジアにある軍事同盟は、日米軍事同盟と米韓軍事同盟だけであり、非同盟・中立が主流です。先ほども指摘したように、ヨーロッパでは、アメリカ主導のNATOの「東方拡大」政策とロシアの軍事ブロック政策の「力」と「力」の対決になり、その外交上の失敗が、ロシアのウクライナ侵略の背景に存在していました。軍事同盟に基礎を置く、「力」の外交は戦争につながらざるを得ないというのが、冷戦後30年のヨーロッパの教訓です。

 しかし、アジアには、ヨーロッパと違い、外交による平和実現の大きな可能性があります。 ASEANが長い年月をかけて、「平和と協力」を追求する重層的なシステムの構築をめざしてきました。

 第1に、それを象徴しているのが、1976年に締結された東南アジア友好協力条約(TAC)でした。TACは、「紛争の平和的解決、武力による威嚇または行使の放棄紛争の平和的解決、武力による威嚇または行使の放棄」をはじめ、すべての国の主権の尊重、外国からの干渉拒否、相互不干渉を基本原則としています。大国に振り回されるアジアから自立したアジアへの転換を開始します。ASEANは、域外の国にもTACに加盟することを働きかけ、域内の平和と域外の平和の結合という画期的な平和戦略を採用します。2003年に中国、インドが参加し、アメリカの顔色を見て躊躇していた日本も04年にTACに参加します。そのアメリカも09年に参加し、12年には年にはEU欧州連合欧州連合)とイギリスが参加しました。

 第2に、地域の安全保障を議論するためのに、地域の安全保障を議論するためのASEAN地域フォーラムをつくります(1994年)。このフォーラムには、ASEAN諸国とともに、アメリカ、日本、韓国とともに北朝鮮も参加(2000年)しており、安全保障を話し合う東アジアでの唯一のており、安全保障を話し合う東アジアでの唯一の「場」になっています。

 第3に、1995年12月、当時のASEAN加盟7か国とカンボジアラオスミャンマーのあわせて国とカンボジアラオスミャンマーのあわせて10か国が東南アジア非核兵器地帯条約に調印しています(97年に発効)。

 第4に、こうした努力の積み重ねの中で、に、こうした努力の積み重ねの中で、2005年にASEAN主導で、先ほど述べた東アジアサミットの第1回会議が開催されたのです。

 このように重層的な枠組みが構築され、東アジアでは紛争を軍事的にエスカレートさせるのではなく、対話と外交的努力で解決するシステムが構築されています。国際紛争を、軍事力ではなく「平和的に解決」するという動きは、もはや東アジアにおいては、不可逆的な流れになっています。

 

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