いまから15年前になりますが、2004年度の勤労者通信大学基礎コース『月報』(現在の『通信』)6号(2004年7月発行)に、浜林正夫さん(故人。専門はイギリス史)のエッセイ「天皇は立ち入り禁止」という短文が掲載されておりました。
なお、テキストに起こすにあたり、読みやすくするために、センテンスごとに改行、パラグラフごとに1行開けにするなどの表記にあらためました。
また、漢字とかなの表記を一部直しました。
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参議院にはふだんはカーテンをかかてあって見えませんが、議長席のうしろに玉座(ぎょくざ)があります。
玉座というのは天皇の席ということで、玉体とか玉音とか、天皇をあらわすときには「玉」という言葉を使います。
これは「玉」という字は「王」に点をうつから「点に王」で天皇というだじゃれから、天皇をあらわす隠語として「玉」という言葉が幕末から使われるようになったといわれています。
日本と同じように、開会式を第2院でやっているのはイギリスです。
これには由来があります。
イギリスでは17世紀のピュリタン革命の前夜、国王と議会の対立がはげしくなり、1642年1月、国王は軍隊を率いて庶民院に乗り込み、議会派の指導者を逮捕しようとしました。
しかし、指導者はすでに身を隠しており、庶民院の議長は「私は議会の命令以外にはしたがいません」といって、国王の入場を拒否し、国王はすごすごと引き上げなければなりませんでした。以来、イギリスでは国王は庶民院へ入ってはならないという慣習が生まれたのです。
では日本ではどういう由来があるのでしょうか。
戦前の日本はどうだったのかと思って、国会図書館に行ったついでに、戦前の日本の議会の開会式はどちらの院でやっていたのだろうかということを調べましたら、戦前の開会式は貴族院でやっていたことがわかりました。
戦前は貴族院のほうが重要な位置を占めていたから当然といえば当然でしょう。
それでは、戦後、衆議院のほうが当然重要な位置を占めるようになったのに、なぜ貴族院が生まれ変わった参議院で開会式をやっているのでしょうか。
いまの国会の建物は戦前1886(明治19)年に着工し、50年の歳月をかけて1936(昭和11)年に完成したもので、当然、玉座は貴族院にだけもうけられました。
戦後、議会の制度も位置づけも根本的に変わりましたが、衆議院に玉座をつくろうとはせず、玉座のある参議院で開会式をやっているのです。
そうすると、日本とイギリスとでは、かたちは同じだけれども、由来はまったくちがうという拍子抜けするような結論になりました。
しかし、とにかく国王を議会から追い出したという革命議会の勇気を私たちも学びたいものです。
そう考えますと、イギリスとちがって天皇には「国政に関する権能」はないと、憲法に定めているのですから、参議院からも天皇を追い出すことが必要です。
憲法「改正」に便乗して、「天皇はわが国の文化・伝統と密接不可分な存在」といって、天皇の地位を見直そうという動きがあるだけに、天皇と議会との関係には厳重な監視が必要でしょう。
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