労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

「幸せ」追求できる税制を目指そう/応能負担原則の回復を

「幸せ」追求できる税制を目指そう/応能負担原則の回復を

 税制改正が話題になる時期です。損得いろんな思いがよぎります。でも日本の税制っておかしくありませんか。もう一度原点について考えてみました。
 
 税金には所得に応じて負担するという大原則があります。応能負担原則です。高所得層は多めに、低所得層は生活に困らない範囲でそれなりに負担するということ。過去30年でこの原則はないがしろにされてきました。今、応能負担の仕組みを社会に回復させることが必要です。
 なぜ応能負担なのでしょうか。誰もが幸福に暮らせる社会をつくるには社会保障などが不可欠。その財源を無理なく集めるには、生活に余裕のある人に、より貢献してもらう必要があります。それによって所得再分配が行われ、社会の公平性が保たれるのです。
 
・税制で金持ち優遇
  ところが、1980年代からこの原則が崩れ始めます。「金持ちに重い負担を課すのは不平等。やる気がなくなる」といった論調が広まり、「みんなが広く薄く負担するのが公平だ」という考え方が強調されはじめたのです。
 所得税最高税率は下げられ、導入されたのは低所得層に負担の重い消費税。税率はいまや当初の3倍近くに引き上げられました。株などの配当所得には低率で課税する優遇策とあいまって、高所得層の負担は軽くなり、中低所得層の負担が重くなっています。
 その結果、2000年代に入ってからは格差と貧困は拡大の一途。08年暮れの「派遣村」はその象徴です。一方で、富める者には一層富が集中する事態が進みました。
 応能負担原則をないがしろにしては、誰もが幸せになれる社会は作れないことがはっきりしました。不平等を是正するための税制改革こそが求められます。
 

 毎年、年末には翌年度の税制をどうするかが話し合われ、政府の次年度予算案に反映されます。今回もさまざまな改正項目が挙げられていますが、格差と貧困の是正につながる項目は見当たりません。
 企業型保育所への税軽減や、企業の年金積立金への法人税凍結などが目玉だといいます。一方、酒税の見直し(2026年まで段階的に実施)では、ビールの税率を下げながら、発泡酒第3のビール増税。日本酒は減税し、ワイン、酎ハイ・ハイボールなどは増税の方向です。
 配偶者控除は、控除を受けられる配偶者の年収要件が103万円から150万円に引き上げられる見込み。103万円は所得控除(65万円)と基礎控除(38万円)の合計で所得税が発生しない上限にもなっています。この「103万円の壁」を配偶者特別控除の見直しによって150万円に引き上げるのが政府案です。しかし、そもそも日本の課税最低限は欧米諸国と比較して低過ぎます。本来は基礎控除(38万円)の引き上げとセットで、配偶者控除の年収要件を引き上げるべき。残念ながら政府にそうした発想はありません。