労働者教育協会のブログ

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日本は立憲君主制か?

 憲法コース受講生からの質問と回答を掲載します。
 
Q:日本はイギリスのような立憲君主制だといえるのでしょうか。天皇を君主と認めることができない以上、立憲君主制ではないと思いますが、何か理解し切れないところがあります。
 
A:
   「戦後の象徴天皇は、戦前の天皇とは根本的にちがってい」る「形式的儀礼的存在」であり(テキスト50ページ)、君主制として実態をもっているとはいえない存在です。
 君主制ではないのですから、当然、立憲君主制ではありません。

 テキスト第1章第2節の2「国民主権の原則」を読み直してください。
 ここでは、明治憲法では天皇主権であったのが、日本国憲法では国民主権となったこと、また、天皇は「日本国民の総意に基く」「象徴」であり、「国政に関する機能」をもたない「儀礼的形式的存在」とされています。
 その意味で、「戦前の天皇とは根本的にちがってい」ることが書かれています。

 イギリスの立憲君主制についてはテキストに書かれていませんので、簡単に解説します。
 イギリスには成文憲法がありませんので、君主の権限についても明確な規定はありません。
 慣習法できまってきただけです。
 形式的にいうと、君主は現在でも立法府の一員であり、行政府の長であり、軍隊の総司令官であり、国教会の首長です。
 しかし実際には、議会がきめた法律にたいして拒否権を発動できず、首相を任命する権限もなく、行政権は内閣にあり、軍隊の指揮権も議会と内閣がもっています。
 国教会にかんしては大主教と主教とで構成する教会会議が権限をもっています。
 ただし、日本のように天皇には「国政に関する権能」はないときまっているわけではありませんので、個性の強い君主は政治に口をだします。
 エリザベスとサッチャー首相とがイギリス連邦のありかたをめぐって大激論を交わしたというのは有名な話です。