労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

そもそも憲法とは何か─憲法コース「はじめに」

 憲法コース押しだし第2弾!
 出血大サービス?で「はじめに」の文章を全文公開します。

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はじめに これから憲法を学ぶ人たちへ

 これから、このテキストで憲法を学ぼうというみなさん、ようこそ! みなさんの受講を心から歓迎します。
 はじめに、みなさんの学びの手助けとなるよう、憲法を学ぶさいのコツ、勘所について、のべておきましょう。

1.みなさんの憲法のイメージは?

●「憲法は暮らしから遠い」か?
 みなさんは、憲法についてどのようなイメージをもっていますか?
 「憲法は暮らしから遠い、関心がもてない」と話す人がいます。周りの人たちの声として、よく耳にしませんか? あるいは、「憲法は難しい、敷居が高い」という印象をもっている人はいませんか?
 学ぶ意欲があっても、そう感じることはありうるし、いや意欲があるからこそ、より強く感じることもあるでしょう。「千里の道も一歩から」という言葉がありますね。なにごとも初歩、基本から始めてコツコツと認識を積み重ねていくことで、理解は深まっていくものです。そうしたなかで「難しい、敷居が高い」という印象も、おのずと解きほぐされていくことでしょう。
 最初から気にやむことはありません。また、「憲法は暮らしから遠い、関心がもてない」というイメージについては、それ自体が「学び」の素材、対象として、ここでじっくり考えてみる必要がありそうです。

●暮らしのなかで「大切なもの」
 みなさんにとって、「大切なもの」「かけがえのないもの」とは何ですか? 少し落ち着いて思い浮かべてみてください。いくつありましたか? それはどのようなものですか?
 さて、みなさんは、毎日の生活のなかでそれらの大切さを「いつも実感」しているでしょうか? そうではなく、よくよく考えてみると「大切」であり「かけがえのない」と思うものではありませんか?
 ふだんはその大切さを実感していない(しにくい)けれども、よく考えてみると、あるいは失ってはじめて気がつく「大事なもの」というのは、案外多くはありませんか。実は、憲法もそういうものではないでしょうか。

2.私たちの暮らしを支える憲法

●国の最高法規としての憲法
 一般に、憲法は、「国の最高法規」とされています。日本もふくめて憲法をもつ国は、憲法に従って政治や裁判をおこなうこと、国家権力はこれに従うことがもとめられています。
 こうした憲法にもとづく政治のことを立憲主義と呼びます。その憲法が、私たち国民に主権者の地位を保障して(国民主権)、また、私たちの基本的人権の保障・尊重をうたい(基本的人権)、そして、権力分立や議会制民主主義、地方自治などの自由を確保し民主主義を実現するための統治の機構を定め、さらには、人権と民主主義の基盤ともいえる平和の実現をもとめている(平和主義)ならば、それはどんなに心強いものか、わかっていただけるでしょう。
 「最高法規」としての憲法が、国の政治がまもるべき「最高の価値」を指し示す。そのことによって立憲主義、とりわけ近代立憲主義は成り立っているのです。
 
●暮らしの土台としての憲法
 こうした「最高法規としての憲法」が、何のために、いまのべたような国民主権基本的人権、権力分立、議会制民主主義、地方自治、平和主義などの原理(憲法原理)を盛り込んでいるのでしょうか。それは、私たちが、安心して自由かつ平和にくらしを営むことができるように、またそのために必要なことは民主主義的なやり方で決定し、運営していくためです。
 「国の最高法規」として、法のなかで最も高い位置にある憲法は、そのことによって私たちの日々の生活の土台となっているのです。私たちの暮らしの「傘でありかつ土台」。それが憲法なのです。
 仮に、私たちがそれを意識していなくとも、憲法は、そういう「存在」として、私たちのくらしと大いにかかわっているのです。ぜひ、憲法コースでの学びをつうじて、そうした憲法を「体感」してみてください。

●人類の歴史的努力の成果としての憲法
 さて、「憲法を体感」する場合に、憲法に込められた人類の歴史的努力の成果、その到達をつかむという視点をもつことを、ぜひともお勧めします。
 先にのべたさまざまな憲法原理は、権力者の圧政や暴虐にたいする人びとの抵抗や、すべての人が人間らしく、かけがえのない個人として生きたいという欲求から生まれたものです。そうした願いをかなえるためにどうしても必要な国民の政治参加と民主主義的な合意形成、専断的な政治を阻止して自由をまもるために不可欠な権力の分立、自分たちのことは自らきめる自治の実践と経験、戦争のない平和な国と世界の実現などを追求する人類のたゆまぬとりくみが、憲法原理に結実してきたのです。
 こうして人類の努力の成果としての憲法が、近代の扉がひらかれるなかで生まれ、そして近代から現代にかけての歴史のなかでも着実に発展してきたことを、この憲法コースでの学習をつうじてつかみとってください。

3.憲法を「体感」するとき

●自由と民主主義の実践
 ところで、どうすれば、憲法を一番「体感」できるでしょうか?「もとめよ、さらば与えられん」。この言葉は、憲法の「体感」にも当てはまります。私たちが一番憲法を感じるとき、すなわち「私は憲法によって守られている」、「憲法が私たちの暮らしの支えだ」と感じることができるのは、憲法が私たちに保障している権利、基本的人権を使うとき、行使するときなのです。
 選挙で投票するとき、みなさんは、真剣な考え、思いでおこなうでしょう。私たちは、主権者として、選挙や住民(国民)投票に参加することができる(参政権)だけでなく、憲法によってさまざま権利を保障されています。思想・良心の自由、言論・表現の自由、信教の自由、学問の自由、人身の自由などの自由権、差別されずに平等に扱われることや男女平等(法の下の平等・平等権といういい方もあります)、生存権、教育を受ける権利、労働権、労働基本権などの社会権、そして「平和のうちに生存する権利」(平和的生存権)など、日本国憲法は、基本的人権についてとても豊かな規定をもっており、「宝の山」です。
 大事なことは、私たちが、これらの権利を「宝の持ち腐れ」にしないことです。憲法が保障する人権は、「絵に描いた餅」ではありません。しかし、これが、現実の社会の中で生き生きと力を発揮するためには、私たちが、それを大いに活用して(行使して)、私たちのいのちやくらしを守ることに役立てることが必要です。基本的人権について、「大切なものだからとっておく」という考えは禁物です。基本的人権は、大切だからこそ、実際にこれを積極的に使い、そのことでその価値をより高めることで、いっそう大切なものとなるのです。
 それは、民主主義も同じです。フランスの啓蒙思想家、ルソーは、「『私の知ったことか』と誰かが言った瞬間、民主主義は死滅する」という言葉を残しています。かなり厳しいいい方ですが、問題の本質をいい当てています。自由も民主主義も、それを行使すること、実践こそが大事であり、それこそがそれらに命を吹き込むのです。

憲法をまもる(まもらせる)ための権利の行使
 いま、政府・与党などの改憲勢力は、日本国憲法に攻撃をしかけ、これを変えようとしています(くわしくはおわりにを参照)。こうした「憲法をまもらない、まもろうとしない」政治にたいして、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。
 私たちは、この憲法が保障する権利を「宝もの」としてもっています。この「宝もの」を行使して、さらに光輝かせることで、「宝もの」としての憲法をまもる、すなわち政治を担当する人たちにまもらせるのです。
 さて、そのためにも憲法のことをよく知ろうではありませんか。

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