労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

イデオロギー闘争と学習内容上の課題~総会方針より ②「国連無力論」をどう考えるか

 少し間が空きましたが、連載を再開します。

 

(2)「国連無力論」をどう考えるか

 ウクライナ危機のなかで、国連の無力化がいわれています。確かに、国連として平和と安全に責任を持つ国連安全保障理事会安保理)は常任理事国であるロシアが侵略をおこない、当然のことながら拒否権を行使するので、一本の決議も採択できません。これは、第二次世界大戦後の国連創設の歴史的事情があります。国連は第二次世界大戦における反ファシズム国際連合を母体に結成されました。その国際連合の中心になった5大国(米ソ英仏中)の結束とその特別の役割を重視し、安保理の5大国に特権的地位が与えられたのです。

 戦後当初はファシズム軍国主義を打ち破る上で大きな役割をはたした「5大国の協調」が示されていましたが、やがて、冷戦以降になり、5大国の 1国が戦争を始めると、安保理が機能しなくなる事態が生まれています。1960年代から 70年代の無法なアメリカのベトナム侵略戦争に対して、国連は安保理決議を採択することができず、まったく無力だったのです。それが、1975年のベトナム戦争におけるアメリカの敗北を契機に、植民地支配から独立した諸国が国連に加盟し、ニューパワーとしての役割を果たすようになります。とくに国連総会で、たとえ超大国でも国連憲章を侵す無法な侵略が批判されるようになります。1979年のソ連アフガニスタン侵略が国連総会で国連憲章違反として断罪され、80年代になると、アメリカのグレナダ侵略(83年)、リビア攻撃(86年)、パナマ侵略(89年)が同じように国連総会で糾弾されます。総会決議は強制力ありませんが、大きな政治的道義的な影響を持ちます。国連の機能が大きく変化しはじめたのです。さらに、2003年、アメリカはイラク戦争を開始しますが、戦争開始前から戦争反対の運動が世界各地で起こり、国連決議のお墨付きで戦争をおこなおうとしたアメリカの野望は成功しませんでした。「国連憲章にもとづく平和秩序」という声が世界中で叫ばれました。

 そして、今度のロシアのウクライナ侵略です。ロシアの拒否権で、国連の役割に大きな制約が生まれています。しかし、そのもとで、国連は大きな役割をはたしています。第1に、国連総会の侵略を糾弾し、ロシアの撤退を求める一連の決議が 140か国以上の賛成によって採択され、国際社会の規範、判断段基準を明確にしたことです。問題解決は、この判断基準に従い、国連憲章をまもるという視点でおこなわれるべきことがあきらかにされています。第2に、国連諸機関や関連国際組織による活発な人道支援などの活動がおこなわれています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連人権理事会などの活動は高く評価すべきです。また国連食糧農業機関(FAO)はウクライナ危機で生じた世界的な食糧危機に、精力的に対応しています。第3に、このウクライナ戦争で引き起こされる戦争犯罪への法的退所の努力です。国を裁く国際司法裁判所、個人を裁く国際刑事裁判所の活動です。国際刑事裁判所は、人道上の罪で、ロシアのプーチン大統領に逮捕状を出しています。

 今後の国連改革の展望は、現実的には国連総会の役割を強化することにあります。5 大国の特権的地位の改革には、国連憲章の改正が必要ですが、これも5大国の拒否権があり、容易ではありません。この問題に関連して、国連総会は昨年4月26日、安保理で拒否権を行使した国に国連総会でその理由を求める決議を採択しました。この決議にもとづく国連総会が昨年6月におこなわれ、北朝鮮への制裁強化決議案に拒否権を行使した中国とロシアが釈明せざるを得ませんでした。こうした国連総会の役割を強化し、事実上、5大国の拒否権行使に制約を与える国連改革が重要な意味を持っています。

 

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