労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

労働者教育運動をめぐる情勢の特徴~総会方針より 国内情勢③現在の労働者状態と当面する労働運動の課題

(3)現在の労働者状態と当面する労働運動の課題


 2023年春闘は、「○○年ぶり」ということばが連発される「異例」な春闘となったと言われています。ここに、現在の労働者状態と当面する労働運動の課題が表われています。


〔消費者物価高騰の影響と労働者の安定雇用・待遇改善の課題〕

 第1に、「30年ぶり、40年ぶり」と言われる激しい消費者物価上昇によって、労働者・国民の生活が悪化しているという事実です。とりわけ生活必需品値上がりが激しく、電気ガスなどの光熱費も1年前に比べて、1.5倍にも値上がりして生活を圧迫しています。また変動の激しい生鮮食料品を除く1000品目以上の食料品が20%程度の値上がりとなっています。2023年3月の名目賃金は、残業をふくむ一人当たりの現金給与総額は29万1081円で、前年同月比では0.8%増えたものの、実質賃金としては2.9%減となり、2022年度は1年間とおして毎月減少したことになります。さらに、高齢者の生活を支える年金も「マクロ経済スライド」発動で実質減を強いられています。
 第2に、「コロナ禍」のもとで非正規雇用労働者の大量解雇がおこなわれたもとで、飲食業や宿泊業などでは、労働力不足によって一部では営業困難な状態さえ生まれています。経済回復のもとで採用を増やそうとしても労働者が戻ってきていません。この背景には改善されない不安定雇用の非正規雇用の増大があります。首都圏での飲食業アルバイト採用の平均賃金は時給1139円といわれていますが応募がないので、連休対応のため時給2000円に引き上げたら応募が殺到したという事実もあります。また「人手不足」のなかでの労働強化・長時間労働が、運送、サービス業界で広がっています。労働者の安定した雇用と待遇改善が喫緊の課題となっていることが社会的に明らかになっています。


〔2323春闘と労働運動の課題〕

 これらの状況のもとでとりくまれた23春闘のなかで、当面する労働運動の課題が明らかになりました。
 賃上げについては、大企業を中心に「満額回答」が広がりました。「満額回答」とはいうものの、これで労働者の生活は改善されるでしょうか。「連合」の賃金目標が5%と物価上昇を上回る賃上げとは言えないものだったこともあり、マスコミでは「満額回答」ともてはやされていますが、実際には定期昇給分とベースアップを合わせて3.89%にとどまります(5月12日「日経新聞」調べ)。
 また内容をみても、ベースアップといっても労働者に一律に賃上げされるのではなく、「査定評価型賃金」が強化されているため、まともに賃上げされない労働者が激増していることには注意しなくてはなりません。中小企業での賃上げは、製造業(JAM発表)でベースアップ5199円にとどまっていますが、サービス業(UIゼンセン発表)では正社員で4.16%、パートで時給59.2円(5.68%)と「人手不足」に迫られ解消する動きが広がっているようにみえます。
 23春闘のなかでは、積極的なストライキ、大衆行動、何度も上積み回答を引き出すなどの先進的なとりくみも生まれて、今後の運動の前進につながる成果を生み出すことができました。しかし問題なのは、大企業をはじめとする多くの職場で、春闘の賃上げが経営側主導でおこなわれたことであり、春闘が終わったときに労働者・組合員が「労働組合ががんばったからかちとれた」と感じていないことが多いということです。これでは、労働者・労働組合の団結が強まり、来年の春闘など次に続くとりくみにならず、労働組合の強化拡大がはかられたとは言えません。ここに当面する労働組合の最大の課題があるといえます。
 その中でも、全労連春闘共闘が「たたかう労働組合のバージョンアップ」「ストライキを打てる組織づくり」をスローガンに掲げ、そのもとで、果敢にたたかいを展開し、新たな教訓をつくり出してきていることに注目したいと思います。


〔「労働組合ががんばったから要求実現に前進できた」という確信を〕

 また春闘期間中にも、ロシアのウクライナ侵略が続いており、さらに北朝鮮による連続したミサイル発射など平和を脅かす蛮行が継続したなかで、国政補欠選挙統一地方選挙がおこなわれましたが、労働者・国民の平和に対する運動の広がりは、きわめて不十分な状態であったといえます。
 これらの現状から求められる労働者・労働組合の強化拡大に求められるのは、労働者の生活悪化に根ざす切実な要求に労働組合が積極的にとりくんでたたかうことによって、「労働組合ががんばったから要求実現に前進できた」という労働者の確信をつくり出すことを徹底して追求することが必要です。そのためには、職場段階での「働き手づくり」、職場活動・職場闘争の強化に全力をあげることが重要であり、「職場から外へ出る活動(企業内労働組合からの脱皮)」を広げて学びあうこと、それに加えて労働組合活動の基礎的な学習活動が求められています。
 さらに平和や政治的な自覚を高めるために、要求闘争と並行して平和や政治に関する大衆的な学習教育活動、憲法反核運動へ積極的参加を意識的に追求することが大事になっていると言えるでしょう。戦後日本の労働組合運動には、反核・平和、憲法擁護を掲げた積極的な経験が蓄積されてきました。連合・全労連に分断されて以降も、「総がかり行動実行委員会」をはじめ全国各地で、平和と憲法擁護の運動がナショナルセンターの垣根をこえて市民運動とともに共同行動を形成し、市民と野党の共闘の基盤にもなっていることを重視する必要があります。

 

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