労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

選挙だからこそ学習しよう─コロナ禍における経済・労働者状態と労働運動の課題(総会方針より)

 選挙だからこそ学習も握って離さず!

 今回は、3年目を迎えたコロナ禍の現状と、そのなかでの日本経済と労働者の状態、そしてそうしたなかでの労働運動の課題について、総会方針から該当部分を抜粋します。

 

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《コロナ禍3年目》
 2021年の女性の自殺者が7000 人を超え、2年連続で増加しました。前年に比べて、自殺の原因・動機として経済・生活問題が最も大きく増加したと言われています(厚生労働省自殺対策推進室「令和3年中における自殺の状況」)。2021 年版の「自殺対策白書」では、2020年の状況を分析し、働く女性たちが追い詰められている実態を明らかにしていましたが、コロナ禍のもとで、状況はいっそう深刻さを増しています。
 内閣府は、このほど、孤独・孤立に関する調査(人々のつながりに関する基礎調査)をおこないましたが、全体で2割の人が孤独を感じており、若年層、派遣社員や失業中、年収の少ない人ほど、孤独を感じる人の割合が高くなっています。また、国立成育医療研究センターの調査では、小学校高学年中学生の子どもの16%に中等度以上の「うつ」症状がみられ、軽度を含めると4 割にのぼるとされています。
 コロナ禍は3年目に入り、感染対策は「ウイズコロナ」へと移行しはじめており、企業活動でも、生活上の問題でも、格差の拡大と回復の二極化がすすむなかで、政府は、「新しい資本主義」によって大企業のいっそうの利益の拡大を、一方で「全世代型社会保障」と称して高齢者からの収奪を強めようとしています。
 いま、生活の領域で、格差と貧困はいっそう拡大し、労働者・国民のなかで分断と孤立化が進行し、不安を抱えて孤立する人が増えています。困難な状況にある労働者・国民に目を向け、国民の「健康で文化的な生活」を支える政治への転換は急務です。

《コロナ禍で日本経済はどうなっているか》
 バブル崩壊以降、日本経済は設備投資も輸出数量も伸びず、停滞し続けていました。加えて労働者の賃金も下がり続けてきました。にもかかわらず一部の大企業は高収益を挙げています。コロナ禍でデジタル関連の大企業は高収益を稼ぎ出しました。加えて、異次元金融緩和による円安・株高政策の影響もあります。円安効果によって輸出大企業は儲けを増やしています。しかし輸出総体は上昇しませんので、国民経済は拡張せず、マクロ的には停滞状況のままです。
 そうした経済実態のなかで重大なのは、労働者の貧困化です。注目すべきは、日本型雇用の解体が深刻化していることです。一家の主たる稼ぎ手の賃金が低下し続けることによって、自活型非正規雇用労働者が増大してきました。そこにコロナ禍が襲いかかり、非正規への休業補償なき休業、シフトカットが横行しました。その結果、フードバンクに長蛇の列が並ぶという、飢餓的貧困さえ一部に現出しました。
 さらに、異次元金融緩和による円安がますます進行することにより、輸入物価が高騰して、新たな不況下のインフレーション(スタグフレーション)の危険性がひろがっています。1970年代にインフレが社会問題となりましたが、今回は日本型雇用が解体し貧困がひろがっているなかでの物価高騰という点で、事態ははるかに深刻です。
 コロナ禍での国民的経験(医療崩壊と保健所機能マヒ)もふまえるなら、いまこそ新自由主義の転換が求められている情勢です。にもかかわらず、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の性格は、装いを新たにした新自由主義の継続に過ぎません。当初、分配重視を掲げていましたが、結局、成長至上主義によるトリクルダウン政策(アベノミクス)の継続に回帰しました。こうした本質を広範な勤労者に知らせる必要があります。
 地域経済の疲弊も重大です。新自由主義グローバル化により、農業や地場産業の解体もすすんでいます。岸田政権の経済政策の問題点は地球環境問題への無策にもあらわれています。気候危機にもかかわらず、それに対応した原発ゼロ、自然エネルギーへの転換がすすみません。ひたすら短期的利益を追い求める財界大企業と自民党政治の退廃がここにも表現されています。

《労働者の状態と労働運動の課題》
 現在、労働者の生活・雇用は「コロナ禍」と物価高騰に苦しめられています。「コロナ禍」で非正規雇用労働者、とりわけ女性労働者に対する「雇い止め」が頻発し、厚生労働省の22年3月発
表によると累計13万人を超え、現在も雇用状況は回復していません。また医療・介護や運輸労働者には、コロナ感染の危険のなかで、労働強化が続くいっぽうで賃金は抑え込まれています。
 2022年国民春闘は、「コロナ禍」からの国際的な経済活動回復に加え、ロシアのウクライナ侵略によって激しい物価高騰に直面しました。「賃金が上がらない日本」という事実が国民的に共有されるなかで、政財界にも賃上げ容認の雰囲気もありましたが、実際の賃上げ状況は、昨年より1000円程度上回っているものの、物価上昇にはまったく追いついていません。職場での賃上げへの実際のとりくみのなかでは、連合・大企業労組が賃上げに消極的な姿勢にも影響され、回答がでると低額でもあきらめがちになることも少なくありません。春闘の本格的前進には「情勢頼み」ではなく、「生計費原則」にもとづく賃上げ要求で団結を固め、要求実現のために、企業の枠を超えてあきらめずにストライキをふくむ労働者・労働組合自身の積極的なたたかいをすすめる以外にないことが、いっそう明らかになりました。
 また「コロナ禍」のもとで雇用を守る雇用調整助成金拡充などの対政府要求、公衆衛生・医療、社会保障充実の大事さが明らかになりました。さらに、ロシアによるウクライナ侵略をやめさせるなどの平和課題など社会的政治的要求について労働組合がとりくむことの大事さが、いっそうはっきりしました。こういうなかで労働者の政治的社会的自覚を高める活動の強化が求められています。

 

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