労働者教育協会のブログ

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ちょっと危ない「日本スゴイ」ブーム/戦前の自画自賛に似てないか?

ちょっと危ない「日本スゴイ」ブーム/戦前の自画自賛に似てないか?

 日本の伝統文化や世界で活躍する日本人を「スゴイ!」と褒めちぎるテレビ番組。過剰演出に疑問を呈した外国人タレントがネット上で「炎上」するなど最近、異論を許さない雰囲気さえあります。この「日本スゴイブーム」現象の正体は何なのでしょう?
 
●四季は日本オリジナル?/無理筋のスゴイも堂々放映  
 
 テレビのゴールデンタイムには「日本スゴイ」番組が目白押し。ネット上にも日本礼賛情報があふれ返り、出版業界では日本の経済や文化などを賞賛する書籍がブームです。
 こうした日本スゴイの中でもとくに人気なのが、「外国人が日本の素晴らしさに感動する」という企画。日本を訪れた外国人が日本の自然や技術・文化を褒める内容が目立ちます。
 なるほどという内容もありますが、中には「日本は四季があるからすごい」といった無理なこじつけも。こうした番組に出演していた米国出身の外国人タレント、厚切りジェイソンさんは今年2月、別の番組で「アメリカにも季節は四つある…でも言ったら、もう全面カット」「四季はどこにでもあるよ!」と嘆きました。
 ところが、こうしたまっとうな意見に対し、日本のタレントが「アメリカに帰れ!」と激怒。ネット上にも批判が殺到したのです。
 当たり前のことを言われてこんなに怒るのは何かがおかしくありませんか?
 
●戦時下にできた日本スゴイの原型/国民総動員の地ならしの役割
 
 昭和初期から終戦直後の雑誌や書籍を検証した「『日本スゴイ』のディストピア 戦時下自画自賛の系譜」(青弓社)の著者、早川タダノリさんは「日本スゴイブーム」は戦時下にも存在していたと指摘しています。
 満州事変をきっかけに1932年、国際連盟を脱退した日本は、国際社会で孤立を深め、戦争への道をひた走ります。その一方、「日本の偉さはこれだ」「天才帝国日本の飛翔」など、日本を自画自賛する出版物が増えていきました。
 「立派な日本人」「海外で活躍する日本人」「美術や工業製品への海外からの賞賛」「肉体的自慢」「日本が持つ世界一の記録」――など。戦時下の日本礼賛は、現在の「日本スゴイ」とうり二つです。
 
●日本の現実を目隠し?/ブームの先の歴史を学ぶとき
 
 「美しい国」「日本を取り戻す」などの自画自賛を繰り返してきた安倍首相。その存在は「日本スゴイ」の論調にも影響を与えています。早川氏は著書の中で、「(2006年の第1次安倍内閣発足以降)『日本にこんなスゴイものがある』だったアプローチが、『こんなスゴイものがある日本はスゴイ』という語り口へと変化した」と分析しています。
 しかし実際は、アベノミクスの失敗や、格差と貧困の拡大、先行き不透明な原発事故処理などスゴくないことばかり。「スゴイ」ブームはこれを覆い隠す役割を果たしているのかも。
 実はこのブームの拡大時期は、中国・韓国への過剰な批判やヘイトスピーチが広がった時期ともピタリ重なります。繰り返される「日本スゴイ」ブーム。その先が「悲惨」だった現実を歴史は教えてくれています。


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