労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

「戦争放棄」についての質問と解答

 憲法コース受講生からの質問と解答を掲載します。
 
 Q  「国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄している」と「国家政策としての戦争放棄を定めている」はどうちがうのでしょうか。前者は法律でさだめていて、後者は法律にはなっていないが政策としている、という理解でいいのでしょうか。

 A フィリピンの憲法は「国策の手段としての戦争を放棄し」と定めています。
 日本国憲法第9条は第1項において、「国際紛争を解決する手段としては」戦争を放棄すると定めています。
 つまりフィリピンは国際紛争があろうとなかろうと戦争はしないときめているのです。
 それにたいして日本国憲法第9条第1項は、国際紛争がないときに武力を用いる可能性がある、すなわち自衛権をもっているという解釈が成り立つのではないか、ということです。

 ただし、仮にこうした解釈が成り立つとしても、第9条は第2項で戦力の不保持と交戦権の否認を定めていますから、第9条全体としてみれば、自衛のための戦争もふくめて放棄していることになります。

 また、憲法第9条自衛権を認めているのだとしても、立憲主義の原則(テキスト11ページ、40~44ページ)からすれば、第9条第2項で国の交戦権を否認している以上、政府が勝手に自衛権を行使することはできません。
 権力者は、憲法がはっきりと認めている方法でしか政治をおこなうことができないのです。
 安倍内閣がたくらむ第9条や第96条の改憲は、そもそもこうした立憲主義の原則に反した行為であり、けっして許されることではなりません。

 なお、軍隊をもつ国であっても、「国際紛争を解決する手段」としての戦争を禁止する憲法上の規定をもっている国は少なからず存在します。