勤労者通信大学では現在、「基礎理論コース」のテキスト全面改訂作業をすすめております。
現在、第2次原稿の段階で関係各方面から意見をいただき、最終調整に入りつつあります。
今日は、だされている原稿のなかから、コラムとして掲載予定の文章を、一部修正して、ここに紹介します。
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【「戦争違法化」原則とは】
6000万人を超える犠牲者をだした2つの世界大戦の惨禍をへて、人類は戦争を否定する「戦争の違法化」の原則に到達しました。
戦車、毒ガス、航空機という新しい兵器の登場によって、第1次世界大戦(1914~18年)は、民間人をふくめ1600万人を超える死者をだす人類史上未曾有の惨劇となりました。この悲惨な体験をへて、1920年、国際政治において初めて集団安全保障の理念にもとづく平和のための国際組織として国際連盟が設立され、そのもとで、「戦争放棄に関する条約(パリ不戦条約)」が成立します(1928年)。
この不戦条約の第1条には、次のような規定が盛り込まれました。
「国際紛争を解決するために戦争に訴えることを非とし、かつ、その相互の関係において、国家の政策の手段としての戦争を放棄することを、各国の人民の名において厳粛に宣言する」。
これは国際連盟が打ちだした「戦争違法化」の理念をより具体化したものです。
戦争を国際法上違法であるとしたはじめての国際条約でした。
それまでの国際政治は国家利益をまもるための「力」の役割を重視し、国際社会の平和と安定は国家間の勢力均衡(バランス・オブ・パワー)によって保障されるという考え方でした。
したがって、伝統的な国際法では、戦争は悪ではなく、国家の利益を守り、国際社会の秩序を保つための国家の権利であり、合法的な行為とみなされていました。
この戦争観が「戦争違法化」へと転換したのです。
不戦条約はこのように画期的な意味をもつものでしたが、「自衛戦争」は否定されていませんでした。
そのため、日本、ドイツなどの「自衛権」の名による侵略戦争を防ぐことはできませんでした。
その結果、人類史上最大の犠牲者をだした第2次世界大戦(1939~45年)がおこったのです。
この苦い経験のうえにたって、再び同じ過ちをくり返さないための国際平和組織として国際連合(国連)をつくり、国連憲章が制定されました(45年10月)。
国連憲章は、「戦争違法化」原則を継承し、その内容をより前進させました。「戦争」だけではなく、「武力による威嚇又は武力の行使」も一般的に禁止され、国際紛争はすべて国連の管理と統制のもとに置き、紛争の平和的解決を加盟各国に義務づけました。
軍事同盟をつくって敵対するのではなく、すべての国がお互いに侵略しないことを約束し、約束を破って侵略したときは、国連が一致して行動するという集団安全保障の原則にもとづく国際組織がつくられたのです。
軍事同盟を否定する集団安全保障の登場は、人類史の到達点として大きな意味をもっていました。
しかし、ここでもアメリカの強い主張によって「個別的、集団的自衛権」(第51条)を認めることになってしまいました。
それでもその自衛権は国連が一致した制裁対応をとるまでの間に限定され、先制的に自衛権を発動することは禁止されています。
こうした「戦争違法化」の世界の流れのなかで、第2次世界大戦後世界の多くの国の憲法は、侵略戦争禁止など何らかの平和条項を持つようになりました。
そのなかでも、日本国憲法第9条は「戦争の放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」を明確にした、最も「戦争違法化」原則を徹底した先駆的な憲法ということができるでしょう。
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