労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

受講生からの質問と解答例

 受講生からだされた質問と解答例を掲載します。
 この質問、実は基礎コーステキストの「考えてみる問題」にも入っているのですが、討論課題ということもあり、解答を明確にしていません。
 いざだされてみると答えに困る問題だと思いますので、以下に解答例を掲載します。
 
《質問》

 「うちの会社は赤字だから、うちの労働者は搾取されていない」という意見にたいして、どのように答えたらいいでしょうか。
 
《解答例》

 テキストで学ばれたように、搾取、すなわち資本家のもうけの源泉は剰余価値です。
 労働者が労働して商品を生産するさい、新商品に新しい価値をつけ加えます。
 資本主義のもとでは、労働者がつくりだす新商品には、労働力の価値、すなわち賃金に相当する分の価値の何倍もの価値がつけ加えられます。

 このテキストでは、労働力に投下した1億円分の価値の4倍にもなる4億円分の価値を新商品につけ加えると説明しています。
 この4億円分の新しい価値から労働力に投下した1億円分の価値を差し引いた3億円分の価値が剰余価値です。
 労働力に投下した1億円分の価値は、新商品となったさいには3倍になって資本家の手元にもどってきます。

 資本家は労働力商品を消費すること、つまり、商品を生産する過程で搾取をしています。
 そして、その商品が価値どおりに売れた場合、剰余価値のすべてを手に入れることができます。

 しかし現実には、どの資本家も剰余価値をすべて手に入れることができるわけではありません。
 現代のように独占資本主義の段階では、価値よりも低い価格での取引を強制されることで、中小企業は独占企業によって収奪されています。
 また、不況期に現われるように、価格が価値よりも大きく下落する場合もあります。
 
 
 このように現代の資本主義社会では、労働者が生みだした剰余価値は、最終的には一握りの大企業に集中していくしくみになっているのです。
 当然、収奪された会社は赤字になります。
 しかしそれは、上記のように、けっして搾取がないということではありません。
 
 なお、この問題をより厳密に考えるためには、企業会計についての基礎知識が必要になります。
 ややこしくなるのでここでは省略しますが、興味があれば、やや専門的な本になりますが、小栗崇資・谷江武士編著『内部留保の経営分析─過剰蓄積の実態と活用』(学習の友社、2010年)をお読みください。