雑誌『世界』の品川正治さんの連載で関西労働学校が紹介されています。
品川さんが関西労働学校に通われていたのは、はっきりとは書いてありませんが、19555~56年ごろのようです。
哲学の中村九一郎さんや経済学の林直道さんとの親交、講師を務めていた労働法の片岡昇さんは高校の同級生だったこと、校長の黒田了一さん(後に大阪府知事となる)のススメで講座(「ドイツ現代史─ワイマール帝国とヒットラー」。ちなみに品川さんは東大の丸山真男門下生だったそうです)も受け持つこととなり、「生徒であると同時に、先生でもあるという奇妙な立場に置かれてしまった」ことなどが語られており、なかなかおもしろかったです。
労働学校への入学を決意する場面での、お連れ合いの静さんとのやりとりも興味深いです。
※以下、長いですが、引用です。
「(関西)勤労者教育協会が、去年から関西労働学校を始めて、労働組合や労働運動を鍛え直していると評判になっているが、それに参加してみようか。そこで勉強してから、組合の専従になって活動するのも一つのいきかただなあ。もちろん夜学のはずだ。明日にでも願書をもらってこよう。いいかい」
静は頭をゆっくり上下に動かして承諾の意を示したあと、ややあらたまった口調で、言った。
「私、一つお願いがあるの。私もその学校に入りたいの。ぜひつれてって下さい。あなたと一緒に学びたいの、勉強したいのよ。組合活動家の妻として一人前になりたいという私の願い、分かって下さるわね」
※以上、引用。
なかなかすごいお連れ合いですね。
正治さんよりも満9歳も年上だとか。
夫婦して労働学校に行く火曜と金曜の夜は、幼少の息子さんを隣の家に預けていたそうですが、息子さんはいつも「ローロー学校、いってらっしゃい」と手を振って大きな声で見送ってくれたそうで、なんだか微笑ましい光景です。
その後、ご夫婦2人して優等生に選ばれ、賞品として『マルクス・エンゲルス全集』全23巻が送られたという話にはおったまげました。
品川さんはこのことについて、「経営していた勤労者教育協会にとってはかなりの出費であったに違いない。六〇年近い昔のことだが、いまも感謝している」と語っています。
他にも紹介したいエピソードが満載です。
興味のある方はぜひお読みください。 (ブログ担当・吉田ふみお)