労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

勤労権と労働基本権

 労働組合コースのテスト答案をみていて、気になっていることがあります。

 最近の傾向の一つとして、本来なら「勤労権」とすべきところを、「労働権」とか「労働基本権」と解答する方が多いというのが見受けられます。
 これは、「勤労」と「労働」、はたまた「勤労権」と「労働基本権」のちがいと関係性をきちんと理解されていない方が意外と多いということを示しているように思います。
 さして難しいことではないと思いますが、基本的かつ大事な問題ですので、少しこの問題を考えてみます。

 日本国憲法第27条では、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」と定めています。

 「勤労」は「労働」よりもひろい概念です。
 一般に「労働」という場合は、労働者が自らの労働力を資本家に売り、資本家が購入したその労働力を使用する行為をいいます。
 「勤労」は、「労働」といった場合よりもひろく、中小業者のように労働者を雇いながら、自らも業務に従事する場合もふくまれます。
 憲法では、社会生活の基本を、こうしたひろい意味での「勤労」におき、国民一人ひとりの「権利」であるとともに、それがなければ社会そのものが成り立たないということで、「義務」であるとも規定しています。

 この「勤労権」は、いくら憲法で規定しているからといって、放っておいても自然とまもられるというものではありません。
 労働者・勤労者の「不断の努力によつて、これを保持しなければならない」(憲法第12条)のです。この「不断の努力」の中心ともいうべき位置づけを与えられるものが「労働基本権」(憲法第28条)です。
 「勤労権」を具体的に保障するためには、この「労働基本権」が必要不可欠なのです。

 具体的に条文をみると、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」となっています。
 実は、この順番がけっこう大事だと思います。

 まず、「勤労権」をまもるためには「数の力」が大切です。
 しかし、「数の力」はそのままでは烏合の衆であり、「数の力」を「団結の力」に高めていく必要があります。
 そして、その「団結の力」を積極的に活用して、資本家や使用者などに「団体交渉」する。
 それでもラチがあかなければ実力行使(ストライキなどの団体行動)にでますよ。
 
 これが憲法第28条=労働基本権の中身なのです。

 ↑↑この部分、以前、前部長のFさんがいっていたのをパクらせてもらいました(^^;)(^^;)

 これらは、たんなる言葉、表現表記のちがいではなく、それぞれに具体的かつ独自の意味をもっています。
 それぞれの意味内容のちがいとともに、その関係性をしっかりおさえておくことが大事です。  (勤通大部長・吉田ふみお)