労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

内閣による最高裁裁判官の任命はまちがい?

 憲法コース受講生からの質問と回答を掲載します。

Q:日本国憲法天皇制の問題以外はベストだと思っていました。しかし、学習をつうじて、第79条第1項は改正すべきではないかと思いました。まちがいでしょうか。

A:
 あなたがそのように考える根拠となったと思われる文章を以下に引用します。

  「……最高裁裁判官については、名簿にもとづかずに内閣が任命する権限があります(第79条第1項)ので、時の内閣が最高裁人事に政治的に介入する、たとえば行政寄りの人物を最高裁裁判官に任命するなどがあり、問題になったこともあります」(214ページ)。

 結論からいいますと、「第79条第1項を改正すべきという考えはまちがいか」といわれれば、そういう立場もありうると思います。
 上記の問題を解決するには、あなたがいわれるように憲法を改正するということもあるし、諮問委員会のようなものを設置するなど事前手続きの制度を整備して内閣の権限を緩めるなどの運用による改善など、さまざまな方法がありえます。

 テキストでは、第79条第1項から生じる現実的な問題点を指摘しています。
 ただし、あくまで指摘にとどめ、その後の判断は受講生にゆだねています。

 この条文に限らず、天皇条項をふくめて、憲法全体について、どこを改正すべきということについては、テキストはひとことものべていません。
 それは、憲法を変えるというのは、第96条にあるように、国会議員の3分の2の賛成による発議と国民投票での過半数の賛成が必要であり、それだけ重大な仕事だからです。

 現在の改憲問題は、第9条や第25条など、憲法の根本精神ともいうべき条項に焦点があてられています。
 憲法の根幹を破壊しかねない現在の改憲(壊憲)策動には断固として反対する。
 その点で一致できるすべての人びとと協力・共同する。
 テキストはそういう立場でつくっています。
 そのほかの問題については改正すべきかどうかということについて、私たちの立場についてはあえて明確にしていません。

 もちろん、将来において、憲法をもっといいものに改善すべきだという国民意識が育ってくることはありうることです。
 しかし、現実に争点となっている改憲の具体的な内容以外については、上記のように、憲法改正の重大性を考慮し、このテキストとしては、その目的との関係からも、個別の問題についての判断はあえて避けています。
 この点、ぜひご理解いただきたいと思います。