労働者教育協会のブログ

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学習課題・イデオロギー問題③:克服すべき学習運動・イデオロギー闘争の課題(2)9条改憲阻止のために(理事会方針より)

 ※ブログ掲載にあたり、センテンスごとの改行、パラグラフごとの1行アキ、一部の表現表記をあらためるなどの措置を施してあります。

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《克服すべき学習運動・イデオロギー闘争の課題(2)9条改憲阻止のために》

○「軍備拡大必要論」をめぐって
 ウクライナ危機、北朝鮮や中国の“脅威”などを口実に「力」には「力」が必要という政府自民党のメディアなどを利用した大キャンペーンが組織され、国民のなかで防衛力の増強はやむを得ないという傾向が浸透しています。
 この「軍備拡大必要論」の影響を打ち破ることが9条改憲を許さないためにも重要になっています。

 この問題を議論するうえで大事なことは、第1に、いまの大軍拡の必要性が、今年5月23日のバイデン米大統領との首脳会談で「日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏づけとなる防衛費の相当な増額を確保する決意」を約束したように、「台湾有事」を想定したアメリカからの要請を積極的に受け入れた結果にもとづいていることです。
 それが具体的には「敵基地攻撃能力」の保有となって軍事費がNATO基準で大増額されようとしています。
 アメリカの中国戦略にしたがっての大軍拡だということをあきらかにすることが大事です。

 そして第2に、このむちゃくちゃな大軍拡が、国民生活の破壊になることをあきらかにしなければなりません。
 世界最低水準の経済成長率のもとで、賃金が長期にわたって抑制され、社会保障費を削減して国民に負担を押しつけておきながら、GDP2%の大軍拡を強行すれば、これからの国民生活を泥沼の状態に追いやることは明らかです。

 第3に、いま強行されようとしている大軍拡は、「敵基地攻撃能力」の確保にみられるように、日本が攻撃される前の先制攻撃によって、相手国の中枢部を攻撃するためのものであり、専守防衛政策とは異質のものです。
 「海外で戦争できる国」にむけての実質的な改憲といえるものです。

 第4には、戦争を防ぐには、平和的な外交努力が必要であり、大軍拡は戦争の危険性を高めることになります。
 軍備の大増強は、相手国を刺激し、地域の緊張を高めるものであり、平和のための外交的努力の障害になって戦争への道を避けられなくさせます。


○「自衛隊明記何でもない論」をめぐって
 自民党の「改憲案」の中心は9条の1項、2項を維持して、「9条の2」を新条項と新設して、「自衛隊を保持する」と明記することにあります。
 したがって、彼らは現実に存在し、国民から支持されている自衛隊を明記するだけだから、何も変わらない、何でもないのだと言って9条改憲を容認させようとしており、最近の世論調査を見ると、国民の中に浸透しつつあります。

 この問題の性格をあきらかにするには、第1に、自民党改憲構想の戦略的転換があり、国民の支持を得るための段階的改憲構想だということをはっきりさせる必要があります。この構想は、2017年5月3日の憲法記念日に安倍首相(当時)によって提起されたものであり、背景には日本会議伊藤哲夫氏らの影響があります。
 伊藤氏らは「今の憲法は『欠陥住宅』であるが」、戦後70年経るなかで、それなりに国民に支持されているので、いきなり「一からの作り直しは不可能」だから、「耐震補強」としての改正案が「現実的である」とのべていますが、これが安倍氏に影響を与え、安倍構想になったのです。
 それまで自民党改憲案は9条2項の削除に最大のねらいがあったのですが、国民感情に配慮して、当面、9条2項に手をつけない改憲構想に転換しました。
 しかし重要なことは、これははじめの1歩であり、それを突破口に段階的に改憲を企て、やがて9条2項を削除し、憲法前文をふくめて全面的にあらためる作戦だということを明確にする必要があります。

 第2に、憲法に明記される自衛隊は2015年9月に成立した安保関連法にもとづいて集団的自衛権の行使が可能になっている自衛隊であり、それ以前の自衛隊とは性格が異なっていることです。
 その自衛隊憲法で容認されることは、「専守防衛」から「海外で戦争する国」への転換が合憲化されることになります。
 第3に「後法は前法に優る」という法律学の原則があり、9条1項・2項がそのままでも、「自衛隊明記」の条項がつくられ、9条1項・2項と矛盾した場合、後からつくられた「自衛隊明記」条項が優先されることになります。したがって、憲法の平和主義の最大の根拠である9条1項・2項が空文化、死滅化されることになります。

 このように、自民党の「自衛隊明記」の改憲構想は、「何でもない」「何も変わらない」のではなく、国民を騙しながら、日本国憲法の平和主義の原則を危うくするものに他ならないのです。


○「9条無力論」をめぐって
 戦後77年がたち、日本は間接的に安保条約でアメリカの戦争に協力してきましたが、かろうじて“戦争しない国”を維持してきました。
 自民党改憲派は、それは日米安保条約=日米同盟と自衛隊のおかげであり、憲法9条など関係がないといっています。また今の国際的危機のもとで、9条は無力だとまでいっています。

 戦後の歴史を振り返ると、日本が戦争に加担する可能性はアメリカとの軍事同盟にもとづく集団的自衛権の行使にありました。
 ベトナム戦争の場合、韓国やフィリピンは軍を派遣しましたが、日本は拒否しました。
 湾岸戦争の場合も派兵しませんでした。
 21世紀になって、特措法という時限立法でアメリカのアフガニスタンイラクへの侵攻に自衛隊は派兵されましたが、武力行使はできませんでした。
 なぜかというと憲法9条による制約があったからです。
 1954年に自衛隊が発足したとき、わざわざ参議院で「自衛隊の海外出動禁止に関する決議」が採択されています。
 そしてその後、日本の防衛政策を規制する「3つのルール」がつくられたのです。
 それは、第1に、自衛隊の海外派兵、第2に、集団的自衛権の行使、第3に、武力行使をともなう国連の平和維持活動への参加、は憲法上許されない(内閣法制局長官工藤敦夫〈1990年10月22日、参議院予算委員会〉)というものでした。

 このように、憲法9条の存在が、集団的自衛権の行使や海外派兵、国連への軍事協力などいっさいの戦争へのかかわりを押さえてきたのです。
 海外の戦争で人を殺したり、自衛隊員が殺されることを防いできたのです。ところが2014年7月の閣議決定や2015年9月の安保関連法の成立によって、集団的自衛権の行使が制約つきですが可能になりました。
 背景には、2015年のガイドラインの決定にみられる日米同盟の深化があります。
 そして、いま「台湾有事」で発動される危険性が生まれています。
 こうしたことをみても、日本の戦争の危険性は日米同盟にあり、それを制約し平和を維持する「力」が憲法9条にあることは明瞭です。
 9条改憲に反対し、日米同盟を止めさせる国民的たたかいこそが、日本の平和を保障する最大の要因といえます。

 

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