違憲包囲網
3日に発表された戦争法案に反対する憲法研究者声明への賛同者が223人となっています(6月12日12時現在)。
4日の衆議院憲法審査会において、参考人3人全員が戦争法案を「違憲」と発言したことと合わせて、まさしく“違憲包囲網”ともいうべき状況です。
4日の衆議院憲法審査会において、参考人3人全員が戦争法案を「違憲」と発言したことと合わせて、まさしく“違憲包囲網”ともいうべき状況です。
安倍政権は、参考人3氏の「違憲」発言への「反論」のためにだした「見解」では、1年前に集団的自衛権の行使容認のために「根拠」としてもちだし、各方面からの批判を受けて破綻済みの砂川判決を性懲りもなくもちだし、居直っています。
現在の彼らには他に手がないことのあらわれであり、戦争法案に反対し改憲策動とたたかうすべての人たちが、そのこと自体に確信をもつとともに、彼らが砂川判決をもちだしてきていることの意味を別の角度からも検証する必要があると思います。
砂川判決(砂川事件最高裁判決)は、昨日の記事にも書きましたように、「安保条約と行政協定による米軍駐留が憲法違反」とする判決(伊達判決)を不服とした日米両政府(昨日の記事では「日米両政府」ではなく「法務省や最高検察庁」となっていますが、当時のマッカーサー駐日大使が藤山愛一郎外相や田中耕太郎最高裁長官に圧力をかけたことは、米解禁公文書により明らかにされています。こちらを参照)が、「高裁を飛び超えた跳躍上告を行い最高裁に持ち込」んで、わずか9ヵ月の審理で伊達判決を破棄したというものです。
つまり、砂川事件の本質は“憲法vs安保”、憲法と安保が真っ向から対決したものです。
60年安保闘争の最中に砂川裁判闘争がたたかわれていたことからも、このことは容易に理解できます。
安倍政権が砂川判決をもちだすのは、たんなる偶然ではなく、彼らの憲法破壊策動と日米同盟強化路線が一体のものとして展開されていることの1つの証拠にほかなりません。
その重要な足場づくりとして戦争法案の成立が企まれているのです。
多くの労働者・国民がそのことを的確につかみはじめており、戦争法案に8割もの国民が反対するという異例の事態をうみだしています。
このなかには、「とりあえず今国会での成立はダメ」「一括審議でよくわからない。慎重審議を」といった立場の人も少なからずいます。
少し前に、憲法第96条を変えて改正要件を緩和しようという動きがあったとき、自民党の憲法の先生だった小林節氏(6月4日衆議院憲法審査会参考人の1人)もふくめて多くの研究者や国民が反対しましたが、キーワードは「立憲主義」でした。
権力者にたいして「憲法どおりの政治をしなさい」という「命令」して規制をかける立憲主義にもとづいて、権力者の勝手な都合で改正できないように、第96条は改正のハードルが高くしてあるのです。
こうした立憲主義の意義は、第9条をはじめとする個々の論点での意見や立場のちがいをこえて、多くの憲法研究者が認めています。
たとえば、アイドルグループAKB48のメンバー内山奈月さんとの「講義録」である『憲法主義─条文には書かれていない本質』(PHP研究所)で知られる九州大学教授の南野森(みなみの・しげる)氏は、同書のなかで以下のようにのべています。
《日本が集団的自衛権を認めることに賛成か反対かについて、僕はこれまで立場を明らかにしてきませんでした。》
《……ただ、昨日まで集団的自衛権は認めないという解釈だったのに、今日からは集団的自衛権を認めるというのは180度の転換です。しかも、9条の解釈、集団的自衛権の是非はとても重要な問題です。解釈で変えるにはあまりにも重大すぎる問題だと思うのです。》
《集団的自衛権を認めるのなら、憲法改正によるべき。もしも解釈変更がこれほど重大な問題で許されるなら、悪しき前例になりかねないと思います。》
《……憲法は国家権力を縛るものです。もしも内閣総理大臣の一存で「解釈改憲」ができてしまうなら、憲法の拘束力はなくなってしまいます。》
《憲法学の観点から見れば、これまで国家権力ができなかったことを解釈でできるようにすることは非常に危ない。国家権力を縛る憲法を、国民の判断をせずに弱めることになるからです。》
さらに最後の点について南野氏は、「おそらく……改憲派の憲法学者であっても同じ意見」ともいっていますが、先ほどの小林節氏の例でもわかるように、まさしく現実が示しています。
つまり、「立憲主義を認めねば憲法学者にあらず」といったところでしょうか。
運動のなかでも、「解釈で9条を変えるな」という声は急速にひろがっています。
これは、小林氏や南野氏の意見が反映したものともいえるでしょう。
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