「路傍の人」さんから、またまたご批判をいただきました。
要約すると、現実の中国や北朝鮮の動向は、たんに支配層がふりまく虚構の脅威論などではなく、きわめて危険であり、だからこそ「安保の『抑止力』に期待しつつ憲法9条も必要だという世論状況になっている」のであり、「安保条約にたよらない方法こそが、もっとも合理的で、かつ現実的であることを示」さないと説得力がない、ということだと思います。
要約すると、現実の中国や北朝鮮の動向は、たんに支配層がふりまく虚構の脅威論などではなく、きわめて危険であり、だからこそ「安保の『抑止力』に期待しつつ憲法9条も必要だという世論状況になっている」のであり、「安保条約にたよらない方法こそが、もっとも合理的で、かつ現実的であることを示」さないと説得力がない、ということだと思います。
すでにコメントにたいする返事で結論的なことをのべておりますが、この点について、参考文献の紹介もふくめて、もう少し展開します。
おそらく「路傍の人」さんは、安保批判を前面にだすのはいいが、安保学習の必要性を訴えているその中身が、いまの世論状況と全然かみ合っていないではないか、ということをいいたかったのだと思います。
平和の地域共同体づくりについては、これまでも、少なくとも近年の安保学習のなかではきちんと位置づけてきましたし、今回の「日米安保を軸とした総学習運動」においても、出版企画のなかの柱立てにもあるように、きちんと位置づけていいるつもりです。
私たちにとっては自明の前提のようになっている問題が、「路傍の人」さんをはじめ、少なくない方にきちんと伝わってなかったかもわかりません。
そこであらためて、平和の地域共同体づくりについて発言します。
とはいっても、ここで全面展開してしまっては「学習運動」になりませんので、要点のみの紹介とし、くわしくは勤労者通信大学の各コース(今年開校のコースであれば基礎コースをオススメします。いますぐ申込可能です。労働組合コースでも一定程度、展開しています。申込・資料請求はkin@gakusyu.gr.jpまで)、とくに来年リニューアル開校予定の新・憲法コースで学んでほしいですし、学習の友社の本にも参考になるものがあります。
まずは、参考文献の紹介です。
すべて学習の友社の本です。
さしあたり、以下の7冊です。
労働者教育協会編『学習の友別冊 なくそう貧困 まもろう憲法 やめよう安保』(2009年8月)
労働者教育協会編『学習の友別冊 これでわかる安保・沖縄』(2010年8月)
川村俊夫著『戦争違法化の時代と憲法9条』(2004年)
川村俊夫著『ちょっと待った 集団的自衛権って?』(2007年)
憲法会議・労働者教育協会編『憲法問題学習資料集』(全3冊、2004~06年)
※ご注文・在庫確認は、gakusyu@po.jah.ne.jpまで。
いま、平和の地域共同体づくりが、ヨーロッパをはじめとして、アジア・アフリカ・ラテンアメリカなどですすめられています。
この動きは、国際連合の憲章(国連憲章)の基本精神ともいうべき「紛争の平和的解決」を、地域レベルで、域内諸国が協力し合いながら実現していこうというものです。
これは、いってみれば、世界の現実が日本国憲法の徹底した平和主義に近づいているということです。
日本国憲法の平和主義原則は、第1次世界大戦の反省から発足した国際連盟のもとで調印された不戦条約(1928年)に端を発する戦争違法化原則を継承・発展させたものです。
その中心である第9条は、憲法の他の条項とちがい、平和的国際秩序の形成とセットでなければ実現できない性質をもっているといえます。
いわば、9条は外交や国際関係についての「国際公約」という性格を有しているわけです。
平和的国際秩序の形成については、国連(国際連合)体制=集団安全保障体制とその変化に注目したいと思います。
集団安全保障とは、軍事同盟を否定し、すべての国(敵も味方も)の参加に集団的体制をつくり、その体制内部がお互いが協力しあいながら、侵略を防ぎ、平和をまもっていくしくみのことです。
国連体制内部における米ソ対立により、ベトナム戦争が無視されるなど、国連憲章に盛り込まれた平和のルールは、戦後長期間にわたり機能不全に近い状態でした。
国連が本来の機能を発揮し、憲法第9条が現実化する条件が整ったのは、ベトナム戦争終結やソ連崩壊を経た1990年代以降のことです。
こうした苦難の歴史を経て、いまや憲法第9条は「めざすべき目標」として、世界から注目されるようになってきています。
現在、世界各地ですすめられている平和の地域共同体づくり(集団安全保障の地域版)は、紛争の平和的解決という点で、国連憲章や第9条と共通した精神をもっています。
この動き、具体的には東アジア共同体づくりに、9条をもつ日本が積極的にかかわることが、さらにいえばリーダシップを発揮することが、平和な世界と日本を実現するための「もっとも合理的で、かつ現実的」な方法といえるでしょう。
また、脅威論の問題についても、もっと大きな構えで考えることが大事だと思います。
それは、中国や北朝鮮が日本にとって脅威だとしても、それ以上に、日米安保体制こそがアジアにとっての脅威だということです。
つまり、日本にとって脅威にみえるような中国や北朝鮮の動きは、安保を是認している日本国民自身が生みだしている「身からでたサビ」なのかもしらない、というようにもとらえられるのです。
だとすれば、お互いにお互いの態度を見直す必要がある。
中国や北朝鮮の脅威を、日本国民が一定のリアリティーをもって受け止めているのだとしても、それはきわめて一国主義的なとらえ方であり、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と謳う日本国憲法の精神とは相容れない態度です。
これは、日米関係を基準にしてしか国際関係、外交問題を理解できない日本国民(もちろん、私たち自身もふくめて)の弱点として、深刻に考えていくべきだと思います。
「アメリカン・グローバリズム」の弊害を取り除き、労働者・国民にとっての「グローバリズム」のあり方を、真剣に議論し、実践していくべきでしょう。
私たちは、「日米安保を軸とした総学習運動」をつうじて、多くの「憲法にも安保にも強い活動家」が育ち、さらには、「憲法にも安保にも強い活動家」たちの活躍によって、多くの日本国民が、文字どおり日本国憲法を実践する「市民」として成長していき、対米従属と財界奉仕から抜けだし、真に「国民が主人公」の「独立・民主主義・平和」の日本を実現するために立ち上がる――そういう状況をつくっていくことに貢献したいと思っています。
ぜひ、多くのみなさんのご理解ご協力をいただきたいと願っています。
期せずして、沖縄返還40周年の日を前後して、こういう議論ができるのは、たいへんいいことだと思います。
まだまだ大事な論点がいろいろとありますので、継続して発言していきたいと思います。 (総学習運動プロジェクト事務局)