安倍政権が今国会での成立を狙う共謀罪の新設法案(組織的犯罪処罰法改定案)。テロなどの犯罪組織に対処するためとされていますが、本当でしょうか。日本労働弁護団は「労組弾圧に乱用される可能性が高い」と指摘し、予測される具体的な事例を挙げています。
●「団交で要求」が共謀罪?
(1)組合が不当解雇の撤回を訴えるチラシを作成し企業前で配布(2)ストライキを計画し連絡文書を作成(3)ブラック企業の製品の不買行動を討議(4)政府の労働法制改悪反対の行動を企画──などはいずれもよくある組合活動です。ところが共謀罪の網がかかると、これらの全てが「組織的威力業務妨害罪」や「組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害罪」と見なされる恐れがでてきます。
同弁護団は「団体交渉が(経営者への)強要・恐喝とされても不思議ではない。組合事務所に捜索が入り、差し押さえられることもあり得る」と警鐘を鳴らしています。
実際に違法行為があったかどうかは関係ありません。組合活動について警察が「共謀の疑いあり」と判断すれば、所属している組合員全員が「組織的な犯罪集団」として、捜査の対象にされてしまう恐れがあるのです。
●日常的な労組監視、冤罪多発も
共謀罪法案が成立すれば「いつ、誰と誰が犯罪を合意したのか」を調べるため捜査機関による監視が強まることも懸念されています。国会質疑でも政府は、「証拠を集めるための通信傍聴を行う可能性」を否定していません。
昨年の参院選では、連合大分などの組合事務所が入っている会館敷地内に県警が隠しカメラを設置していたことが発覚しました。
大分県の組合関係者は「県警は公務員が違法な選挙活動をしていないか調べるためだったと言っている」と話します。共謀罪ができれば、こうした不当な捜査にフリーハンドを与えることになります。捜査のためと言って盗聴・盗撮の範囲が広がり、冤罪(えんざい)を大量に生み出す可能性が大きくなります。
日常的な監視に加え、「共謀の疑いをかけられたら職場や家族に迷惑がかかる」という組合員の不安が強まれば、組合活動の萎縮は避けられません。
●必ず弾圧に利用──歴史が証明
日弁連共謀罪対策本部副本部長の海渡雄一弁護士は共謀罪の歴史についてこう指摘します。「英国で王政への反逆者を取り締まるために生まれた共謀罪は、のちにストライキを行う労働者へ適用され、米国では反戦運動の弾圧に使われてきた。最初から共謀罪の本質は大衆運動を敵視するものだった」
組合活動を制限する共謀罪は労働組合の武器である労働基本権を骨抜きにする法案です。戦前、治安維持法によって全ての労働組合が弾圧され解散に追い込まれました。共謀罪法案の成立によって、労働組合の活動が制約を受けるのは間違いありません。
※『連合通信』特信版ニュースより。
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