労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

全教機関誌『クレスコ』に宮城道良さん登場

 全教の機関誌『クレスコ』最新号(2012年2月号)の「本との対話」というコーナーに、『最前線兵士が見た「中国戦線・沖縄戦の実相」』の共著者・宮城道良さんが「『戦争』は教えてきたが、『戦場』は教えてきたのか」という一文をよせています。
 
 同書や石山久男・『学習の友』編集部編著『戦争ってなんだ?─証言が伝えるアジア太平洋戦争』(学習の友社)のことなどを紹介してくれています。
 
 その一部を紹介します。
 
 
 「あの戦争で、被害を最も受けたのは、『住民』『最前線兵士』。
 その死や苦しみを語らないで、淡々と戦争の年号を教えるのは、戦争を教えたことにならない。
 『証言者』が、苦しみながら吐き出した『証言』から、生徒それぞれが自分に降りかかった被害として、共感を覚える。
 そういう授業をしてこそ、戦争を教えたことになるのではないか」。
 
 「……教える側が十五年戦争の全体像をつかみ、『証言』と『映像』を上手に使えば、多くの中高校生・大学生は『戦場とは何か』を、こころで理解してくれると思う」。
 
 
 宮城さんは先の共著書で、「加害と被害の重層性」という、古くて新しい問題を提起しています。
 最前線兵士が「加害兵士に仕立てられた七被害者」というのは私も同感です。
 
 2010年度にリニューアルした現行の勤通大基礎コーステキストでは、第6章「日本社会の変革をめざして」において、日本国憲法の制定にかかわって、戦前の日本社会と戦争責任の問題について記述しています。
 戦争責任については、「最大の責任は天皇軍国主義」にあるとしながら、他方で「日本国民の加害責任」の問題についても言及しています。
 
 「沖縄戦、原爆の投下、シベリア抑留などの数かずの惨劇*、日本軍兵士の餓死・病死問題などを見ても、日本国民も犠牲者です。
 しかし同時に、その日本国民が侵略戦争に動員され、中国やアジアで国際法違反の犯罪行為を強制させられたことも事実です。
 すなわち、軍国主義というシステムは、国民=民衆を戦争に動員することによって、悲劇的な体験とともに加害的役割をも余儀なくさせてしまうのです。
 この加害と被害という『二重の悲劇』を生みだす軍国主義のシステムの恐ろしさと問題性を深く理解し、この復活を許さないことが、これからの日本国民の歴史にたいする責任といえます」。
 
 宮城さんの提起につうじる問題を、基礎コーステキストでも言及しています。
 「加害と被害の重層性」、あるいは加害と被害の「二重の悲劇」という問題を、もっともっと深め、国民的論議にまで高めていく必要があるなと、昨今の歴史認識問題の状況をみるにつけ、あらためて痛感する次第です。
(ブログ担当・吉田ふみお)