狙いは米国の戦争への参戦
小澤隆一東京慈恵会医科大学教授に聞く
安倍首相は3月、防衛大学校の卒業式で、改憲を進める姿勢をあらためて強調しました。自民党は自衛隊を条文に明記するだけで大きな影響はない、と説明しますが、本当でしょうか。九条の会の事務局を務める小澤隆一東京慈恵会医科大学教授に聞きました。
「海外展開」国民支持せず
自衛隊が国連平和維持活動(PKO)で派遣されていた南スーダンが内戦状態だったことがわかった際、部隊の帰国を求める世論が高まり、実際に撤退しました。海外での戦争参加に道を開く安全保障法制が国会に提案された2015年には、憲法研究者や内閣法制局長官経験者らが違憲であると訴え、全国で大きな反対運動が起きました。
変質する自衛隊の役割
安保法制では、他国の粉争に自衛隊が協力する「集団的自衛権」を行使できるようになりました。それでも、日本への武力攻撃の恐れのある「重要影響事態」の場合は、「後方支援」に限るなどさまざまな限定を付けています。
それらを全部取り払い、米国の戦争に自衛隊が関わることを可能にすることに狙いがあります。
事実、自民党の改憲案は「自衛の措置」を妨げないとしています。これには集団的自衛権が含まれると解するのが妥当です。政府は従来「必要最小限度」の実力行使として、自国を守る個別的自衛権の行使が認められると説明してきました。改憲案ではこの「最小限度」が消えています。
変わる平和国家・日本
平和国家のありようも変わります。現在、自衛隊は防衛省の行政組織の一つと扱われています。改憲案を読むと、明治憲法下の天皇のように内閣総理大臣が「統帥権」を持つ「実力組織」となっています。閣議を経ずに自衛隊を指揮できることがうかがえます。
求められる「9条生かす」姿勢
「侵略から日本を守る抑止力が必要」ともいわれます。抑止力には、他国の攻撃を阻止するものと、圧倒的軍事力で他国を威嚇するものとがあります。従来、自衛隊は専守防衛で、他国の攻撃から国を守るという前者の位置づけでした。
それが、「空母」を配備するなど米国と一緒に他国に武力行使できるように変えられようとしています。当然、中国や北朝鮮は脅威に感じるでしょう。軍事的対抗関係はエスカレートし、東アジアの緊張はさらに悪化してしまいます。
韓国の文在寅大統領は、悲惨な朝鮮戦争を二度と起こしてはならないと、戦争状態の終結に向け北朝鮮と米国の交渉を後押ししています。日本も平和な東アジアにするために努力を尽くすべきです。憲法9条を変えるのではなく、生かすことこそ今求められます。
※『連合通信』特信版記事より。
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