労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

安保をめぐる世論状況

 この間の「路傍の人」さんとの議論のなかでの重要な論点の1つとして、安保をめぐる世論状況をどうとらえるか、という問題があります。

 この点にかかわって、興味深い世論調査があります。
 2010年11月に実施された「日米安保のいま」(NHK)です。
 この調査については、先日とりあげた、日本共産党の志位和夫委員長の講演でも紹介されています。

 この調査によれば、「日米安保が日本の平和と安全にどの程度役立っているか」という設問にたいし、「どちらかといえば役立っている」が40.2%、「役立っている」が31.4%で、あわせて71.6%の多数です。

 しかし、「軍事力の増強を進め,日本近海においても活動を活発化させている『中国』については、日本はどのような姿勢で対処すべきか」という設問にたいしては、「アメリカの軍事的抑止力によって、対処していく」は12.4%にとどまり、「アジアにおいて他の国々とともに、対処していく」が57.3%にのぼり、次いで「日中二国間の関係を深めることで、対処していく」が23.2%で、あわせると80.5%に達します。

 また、「国の安全を守るために、日本は今後どのような安全保障体制を目指すべきか」という設問にたいしては、「日米同盟を基軸に、日本の安全を守る」は18.9%にとどまっており、「アジアの多くの国々との関係を軸に、国際的な安全保障体制を築いていく」が55.2%と半数を超え、「いっさいの防衛力を持たないで、中立を保ち、外交によって安全を築いていく」が11.9%をあわせると67.1%となります。

 つまり、これからの安全保障のあり方についても、中国の動きへの対応についても、アジア諸国との外交によるべきだという意見が多数を占めているのです。

 もちろん、「安保が役立っている」と評価している人も7割に達してますから、「憲法も安保も自衛隊もまるごと容認」という国民意識が根本から変わったということではないと思います。
 それでも、上記のような安全保障観の変化は、注目に値します。

 こうした変化は、自民党政権の退場や民主党政権の混迷・裏切りと密接に関係してると考えられます。

 2005年ごろから本格化した明文改憲とのたたかい、2007年参院選での自公与党の歴史的惨敗と安倍改憲政権の退場、2009年総選挙での自民党政権の退場と民主党政権の誕生という流れは、日本国民が自民党政治に代わる新しい政治のあり方について模索と探求をつづけていることを示しています。

 さらに3.11以降、政治・経済・社会のあらゆる面から日本の行く末について根本から問われることになっています。
 人間の“いのち”と、人と人とのつながりの大切さが見直されはじめています。
 この見直しの動きが、日本の「2つの異常」(アメリカべったりの政治・経済と財界本位の政治・経済)の見直しにつなげていくことが大切ですが、これは自動的にはすすみません。
 やはり日本社会のあり方についての本質的な議論と学習が不可欠です。

 日本社会のあり方を根本的に問うていくさい、その岩盤としての日米安保を避けて通ることはできないでしょう。
 先ほど紹介した講演で志位さんも、日米安保条約の是非を根本から問う国民的議論を呼びかけていますが、私たちが推進している「日米安保を軸とした総学習運動」の問題意識とぴったりかみあうものです。

 紹介してきたような流動的な世論状況は、私たちの働きかけ次第で、安保廃棄を国民的多数派にしていく現実的な可能性を示しています。
 「憲法にも安保にも強い活動家」の集団がもとめられているといえます。

 いまこそ、学習教育運動の出番だと痛感します。   (総学習運動プロジェクト事務局)