LGBTは生産性がない――。杉田水脈衆院議員の寄稿文により、批判を浴びた雑誌「新潮45」が廃刊になりました。でも問題はこれから。多様な性を認めるために何が必要なのか?――を考えることこそが求められています。
「高校時代、制服のスカートをはかされたのが、人生で一番嫌なことだった」と遠藤まめたさん。性的少数者(LGBT)の若者の交流会「にじーず」を主催しています。
遠藤さんは女性として生まれましたが、自認する性別は男性。いわゆるトランスジェンダーです。高校時代、それを教師に告げたところ、「思春期にはそういう気持ちになるものだ」と見当違いのアドバイスをされました。
「私の場合は、カミングアウトを友人が受け入れてくれたことで、救われました。でも、周囲に言いふらされて学校に行けなくなったりする人もいる。自死した人も少なくありません」
国会議員の杉田氏が子どもたちを傷つけたことに怒りを感じています。「『自分たちは議員からこんなことをいわれる存在なのか』とショックを受けている思春期の子が多い。『夜眠れなくなった』という声も聞きました」
〈写真〉遠藤さんは今年、自らの体験をつづった本「オレは絶対ワタシじゃない」(はるか書房)を出版
非当事者の行動が大切
こうした状況を変える鍵として遠藤さんが挙げるのが、LGBTではない「非当事者」の行動です。
「英国のウィリアム王子はゲイ雑誌の表紙に登場することで、『みんな自分を誇りに思ってほしい。性の多様性は恥ずべきことではない』という姿勢を示した。日本でも『自分は差別しないよ』と(内心で)思っている人はたくさんいますが、目に見える形での肯定的な言動がないと、当事者の孤立は防げません」
TV番組などにはLGBTをからかうような言説がまだまだあふれています。
学校や企業で身近な大人が「自分はいじらない、差別しない」という「態度モデル」を示すことが、社会を変える一歩になるかもしれません。
廃刊で終わりではない
LGBTとは 20人に1人との調査も
LGBTとは、女性同性愛者(レズビアン)、男性同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシャル)、生まれつきの性別に違和感を持つ人(トランスジェンダー)のこと。性的少数者の総称です。さまざまな調査から、20人に1人存在するといわれますが、日本では偏見や差別が根強く、周囲に告白する人は多くありません。
2000年代に入ると、多様な性を認めた上での、同性婚の法整備が欧米諸国で整いはじめ、日本でも東京都渋谷区で2015年、初めて同性カップルのパートナーシップ条例が成立。その後複数の自治体が導入の動きを見せています。
これを快く思わない人々が「日本の伝統的な家族観」が崩れるといった理由で反発。杉田氏は、その急先鋒(せんぽう)でした。
※連合通信特信版ニュースより。