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核兵器禁止条約を核兵器廃絶への一歩に/青山学院大学名誉教授 新倉修さんに聞く

核兵器禁止条約を核兵器廃絶への一歩に                青山学院大学名誉教授  新倉修さんに聞く

 3月末に国連で行われた「核兵器禁止条約」の交渉会議。議論を踏まえて7月にも条約の成案が合意される見通しです。しかし、核保有国はもちろん、日本を含め「核の傘」に入る同盟国は条約拒否を明言しています。条約は果たしてどこまで力を持ち得るのか? 国際法に詳しい青山学院大学の新倉修名誉教授(弁護士)に話を聞きました。
 
Q 核兵器禁止条約の意義を教えてください。
 
 大きく二つの効力があると考えています。一つは、「条約締結国は核兵器を持てない」という拘束力。そして二つ目は「条約締結国は核攻撃を受けない」という保障です。
  核保有国は条約不参加を表明していますが、核兵器使用が国際犯罪であることが条約で明確になるわけです。「条約締結国に対しての核攻撃は許されない」という国際法上の紳士協定からは核保有国も逃れることができません。
  実はこれまでも核兵器は合法だったわけではありません。「不必要な苦痛を与える兵器」や大量破壊兵器は国際人道法に違反するからです。だからこそ国連は過去、核兵器使用禁止や廃絶の決議を採択し、国際司法裁判所も「核兵器使用は国際人道法に違反する」という勧告的意見(1996年)を出したわけです。
 しかし、これらは政治的宣言に過ぎず、各国には従う義務がなかった。法的拘束力を持つ条約は、位置づけがまったく異なります。条約は核兵器廃絶への大きな一歩になるはずです。
 
Q 日本政府は条約不参加を表明しました。
 
 アメリカの「核の傘」に入っていることが安全保障上の得策というのが日本政府の立場。一貫して、「今すぐの核兵器廃絶は求めない」と主張し、米国のオバマ前大統領が「核の先制不使用」を打ち出した際にも反対を表明しています。
 今回の不参加もこうした姿勢の延長線上ですが、本当にそれでいいのか? 交渉会議で日本政府代表は、被爆者代表の藤森俊希さん(日本被団協事務局次長)の目の前で「現実の安全保障問題の解決に結びつくとは思えない」と述べて退席しましたが、大変に恥ずかしいことだと思います。
 
Q 「条約は北朝鮮を利する」の意見もあります。
 
 北朝鮮の核開発は許されませんが、どこまで差し迫った危機なのかについては「脅威論」が膨らみ過ぎている気がします。
   多くの専門家が指摘するように、技術的な問題に加え、政治的にも日本に対して使う蓋然性はゼロ。同胞(在日韓国・朝鮮人)が何十万人と住んでいる日本に使うでしょうか?
 北朝鮮は核開発の理由を「自国の安全を守るため」と説明しています。とするならば、条約加盟は「核攻撃されない」保障につながるわけですから、核開発の重要な口実が一つ減ることにもなる。北朝鮮のような国こそ条約加盟を進めるべきだと指摘したいですね。
 
Q 今後の核兵器廃絶へのプロセスをどう展望しますか?
 
 A 条約案が9月以降の国連総会で採択されるのは間違いありませんが、実際に発効するには一定数の国がそれぞれの国の手続きに従って批准・加入をする必要があります。
 そのためには、今回の交渉で条約に賛同した国はもちろん、会議をボイコットした核保有国やその同盟国でも、それぞれの国民が条約批准を各国政府に働きかける取り組みが重要になってきます。
 それは日本も同様です。私たち日本国民は、日本政府を「条約賛成」へと動かしていく責任と義務がある。核兵器廃絶への私たちの真剣度が問われることになると思っています。


 
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