労働者教育協会のブログ

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〈長時間労働の温床〉36協定って何だっけ?

長時間労働の温床〉36協定って何だっけ?

 政府が「働き方改革」の重要な柱と位置付ける長時間労働の是正。それを具体化する上で避けて通れないのが、残業を事実上青天井にしている36(さぶろく)協定の扱いです。どうすればいいかを考えるためにも、この協定のそもそもについて振り返ってみました。
 
●戦後の経済復興が目的だったはずなのに――
 
 労働基準法36条の規定は1947年の制定当初からありました。1日8時間・週40時間(当時は48時間)を超えて働かせる場合や休日労働を命じるときに必要な手続きを定めています。終戦間もない日本経済を早く復興させるため、残業については厳しく規制せず、扱いを労使に委ねるという対応が取られたのです。
 しかし、経済大国になってからも36協定は残り、長時間労働の温床に。批判の高まりを受け、1982年には残業時間の「目安」(月50時間など)を示す指針がつくられましたが強制力はありませんでした。
 その後、目安時間を45時間に短縮する指針改定を経て、1998年には指針を「大臣告示」に格上げ。目安時間を限度時間に改め、「この時間を超えないものとしなければならない」と規定しました。
 この時、同時に公認されたのが特別条項付き協定です。それまでは目安時間を超えるときの労使の自主ルールだった特別条項について「利用できるのは年間の半分まで」などの基準を定めたのです。
 それから20年近くが経過しました。月45時間の限度時間は多少浸透したものの、今では特別条項という例外が大手を振って横行しています。
 
●44%の事業所で違反
 
 昨年、厚生労働省が「長時間労働が疑われる事業場」を集中的に監督指導したところ、43・9%の事業場で違法な時間外・休日労働が見つかりました。
 具体的には、36協定なしの残業や、36協定で定める限度時間を超えて残業させていたケースなどです。半数以上の事業場で36協定が守られていませんでした。
 36協定違反の横行は、労働組合のない職場にとりわけ目立つことも明らかになりました。
 
●締結を拒否した時代も
 
 かつては、労働組合が36協定を活用して労使交渉を有利に進めていた時代がありました。
 電機大手の元役員は「賃上げ交渉が行き詰ったときなどに、36協定を締結しないで残業を拒否する戦術は普通だった」といいます。
 4月に毎年協定を結び直す職場の場合、3月末の賃上げ交渉で「4月以降の36協定締結拒否」を掲げるというやり方です。以前の郵政の職場では、毎月協定を結び直しており、常に残業拒否の手段を活用できる状態だったといわれます。
 
●ILO条約未批准は恥
 
 日本は国際労働機関(ILO)が制定した労働時間に関する18条約を一つも批准していません。
 その理由について、塩崎恭久厚労相は36協定があるためと説明しています。1日8時間・週40時間の例外を設ける36協定は条約批准の障害だという認識です。
 労働時間規制に例外を設けるという点では、変形労働時間制の存在も無視できません。
 ILO条約は途上国ですら守る国際ルール。グローバル化時代に批准していないのは恥ずべきことです。


 
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