労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

「憲法くん、出番だよ」/お笑い芸人 松元ヒロさん

憲法くん、出番だよ」/お笑い芸人 松元ヒロさん

 お笑い芸人松元ヒロさんが20年演じてきた一人芝居「憲法くん」。改憲勢力が衆参両院で3分の2議席を獲得し、改憲の危機はすぐそこまできています。「今年は正念場」と語る松元さんに聞きました。
 
●リストラ(改憲)なんてとんでもない
 
 一人芝居「憲法くん」は1997年に誕生しました。日本国憲法施行から50年目を記念するものだったんです。昨年冬にはライブをもとに絵本を出しました。平易な文章で、憲法の成り立ちとこの70年間を振り返っています。
 現憲法の一番最初の言葉はずばり「日本国民は」です。前文の1行目でまず国民主権を定めています。危険を感じるのは、改憲勢力がこれを「日本国は」に変えようとしていること。現憲法は「庶民が国家権力を縛るもの」なのに、それを逆転させたいのでしょう。安倍さんら改憲勢力の言うことは、「アベコベ」すぎます。
 日本国憲法は、国境を越えて、長い年月をかけてつくられたものです。僕もライブで「アメリカの血が混じっている」と言っていますが、米国だけじゃない。井上ひさしさんも指摘していたように、英国の名誉革命権利章典、米国の独立宣言と合衆国憲法、フランス人権宣言…それから2度の世界大戦で多くの血が流された結果として生まれたものなんです。
 
●国境って本当に必要ですか?
 
 英国のEU離脱、米国でのトランプ大統領誕生に象徴されるように「自分の国だけ良ければいい」というムードが今世界中に漂っています。トランプさんなんかメキシコとの間に壁を造るとまでいっている。
 ジャーナリストのむのたけじさんが生前語った言葉を思い出します。「戦争をなくすのは簡単だ。国をなくせばいい」――同感です。戦争は自国の領土を守るために始まる。だったら国をなくせばいい。国境なんかいらない。もともと大地に線なんて引かれてないんですから。
 小さいことを言うのはやめましょう。世界はただ一つ。そこには「恒久平和」を定める日本国憲法があれば十分です。
 
●平和だから芸ができる、笑いがある
 
 「わたしは、この七十年間、たった一度も、戦争という名前のついたおこないで人を殺したことも、人に殺されたこともありません。わたしはそのことを誇りに思っています」というセリフが「憲法くん」の最後のほうにあります。このあたりで、涙をぬぐう方もちらほら見えます。お客さんの危機感が20年の間、強まってきたことを実感します。
 戦争はいったん始まったら「反対」と言いづらい雰囲気を生みます。先の戦争でもそうでした。終戦後、「自分も本当は反対だった」と漏らす人は多かった。「一億総火の玉」となっていた世の中が、戦後は「一億総ザンゲ」状態になりました。これではいけない。そうならないように今、声を上げることが大切。第一、芸人が芸をできるのも平和があればこそ。そんな思いで「憲法くん」を今後も演じ続けます。