労働者教育協会のブログ

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時の問題/駆け付け警護は必要か?/南スーダン派遣の陸自部隊

時の問題/駆け付け警護は必要か?/南スーダン派遣の陸自部隊

 政府は南スーダンに派遣する陸上自衛隊に、「駆け付け警護」などの新任務を付与する方向です。「戦死」の危険が高まるのに、いまだに「リスクは増えるわけではない」(10月12日、稲田朋美防衛相)という答弁を繰り返しています。社会文化法律センターや自由法曹団など法律家6団体の院内集会(10月27日)の内容を基に、この問題を考えてみました。
 
南スーダンPKOって?
 
 南スーダンはアフリカ中央部に位置し、2011年にスーダンから分離独立しました。古くは、19世紀にエジプトが旧スーダン北部を、英国が南部を統治していました。1970年代に南部で油田が発見されて以降、独立機運が一層高まり、内戦を経て、11年に新国家が樹立されました。
 同年、当時の野田政権がPKO(国連平和維持活動)への自衛隊部隊派遣を決定。首都ジュバ近郊で、道路整備や避難民への医療活動、避難民保護区域の整備を行ってきました。
 13年から内戦状態になりましたが、昨年8月に和平合意。ところが今年7月、大統領派と副大統領派の間で戦闘が勃発。約300人が犠牲になり、現在も戦闘が散発的に起きています。
 政府は10月、陸自の派遣を3月末まで延長することを決定。11月初旬にも、国連職員や民間人、他国軍の救助に向う「駆け付け警護」と、宿営地を他国軍と「共同防護」するという新任務を付与する方向です。昨年強行成立された安保法制(戦争法)に基づく任務です。
 
●これが積極的平和主義?
 
 政府は新任務を「積極的平和主義」に基づく活動と説明しています。「平和のため」を強調しますが、効果は疑問視されています。
 現地では今夏、政府軍部隊がホテルを襲撃し、民間人が殺傷される事件が起きました。近隣のPKO部隊は救援要請を拒否。地の利があり、国連を敵視する政府軍と、それを支持する民兵らに銃口を向けることは、非常に危険だからです。PKOの限界を超えているともいわれます。
 「積極的平和主義」の言葉の使い方も間違いです。清水雅彦日本体育大学教授(憲法学)は「戦争をなくすだけでなく、構造的暴力を非軍事でなくそうという概念で、紛争の背景に貧困があるならば、その根絶を図ろうという考え方。新任務付与を急ぐ安倍政権は『積極的軍事主義』というべきだ」と批判します。