労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

質問回答─連合をどうみるか

 労組コース受講生からの質問と回答を掲載します。

[質問事項]
テキストの労働組合論は階級的民主的立場に立ったものであり、内容は全く正しいものと思います。一方、連合など特定政党支持、労使協調主義に立つ労働組合がよってたつよりどころとは何なのでしょうか。ご教示ください。また、この件で理解を助ける文献がありましたら、ご紹介ください。

[回答]
 階級的民主主義に立つ労働組合は、「要求にもとづく団結」「資本からの独立」「政党からの独立」「要求にもとづく団結」の3原則をふまえたものですが、連合は、この基本原則をきちっと踏まえたものになっていません。表向きは労働者の生活の向上や賃金・労働条件の改善を掲げますが、職場労働者の実態と要求よりも、景気動向や企業経営の状況を先に考えて、それに対応するように要求を抑えたり、闘争を手控えたり、生産性向上をめざすなど、先ず経営の発展に努め、それがうまくいけば、労働者もおこぼれにあずかれるという立場です。財界・大企業の唱える生産性基準原理や企業の支払能力論と歩調を合わせ、経営側の立場に組合活動を同調させることに目的があったのです。連合のよってたつよりどころは、労使協調にあり、結局、経営の発展にあるわけです。大企業の労働組合の多くが連合の傘下に組織されている中で、賃金・労働条件の低下、正規雇用の非正規雇用への置き換えなど働く条件の悪化となる一方、企業側の利益と蓄積(内部留保)の大幅増となった状況は、連合のよりどころがどこにあるか端的に示しています。連合の活動の重点は職場にあるよりも、政策制度に置かれ、その分、特定政党支持の取り組みが重視されます。職場は企業側の労務管理機構に握られ、職場労働者の権利が軽んじられる一方で、組合の活動は特定政党と結んだ政治の場が重要視され、組合員にその政党の支持の活動を押し付けることになるのです。労使協調と特定政党支持の押し付けとが 結びついています。
 こうした連合の性格は、財界大企業の画策による闘う労働組合の分裂破壊、労使協調労組への置き換えの策謀、労働組合の闘争力を奪って利益と蓄積の拡大のための体制づくりに狂奔した1970年代、80年代の右翼労働戦線統一、それによる総評の解体と連合の結成、これに反対する全労連結成という歴史的経過の中で形成されてきたものです。従って、連合の性格とそのよりどころを把握するには、この歴史的経緯も掴んでおくことが必要です。この点では、「学習の友」12月号の「目で見る学習=トピックで学ぶ春闘の歴史」も参考になるとおもいます。
 もちろん、連合のあり方も、情勢の推移とともにかわってきます。その形成の経過にみられるように、労働組合の3原則が弱められた組織となることで、労働組合としての連合内部にも、組織の矛盾が広がってきます。組織対象は正規雇用で、コスト削減のための人減らしの人員整理は、組合員の大幅減となり、賃金ダウンはじめ働く条件の悪化は、組合員の組織への信頼を失わせ、組合離れの要因となり、大量に導入された非正規雇用は未組織で使い捨てにされるという状況は、連合の組織の力を減退させ、社会的影響力の低下につながりました。これを回復するために、非正規拡大の労働法制改悪反対、非正規の働く条件の改善と組織化、賃金の底上げや最賃引き上げ、ベースアップに取り組むなどで、労働者の要求に配慮し、組合員とのつながりの再構築を考えざるを得なくなり、それが労使協調や特定政党支持の組織ではあっても、階級的民主的労働組合との一点共闘となる条件が生じてくる変化をもたらされています。その共同の積み上げの中から労使協調の枠を越えた取り組みとなる可能性を引き出すことも大切になっています。こうした連合の「よってたつよりどころ」の変化については進行しつつある過程であり、まとまった文献というより、多様な課題についての共同の状況の進展の情報を捉えていくことが必要です。

回答者:金田豊(勤通大労組コース教科委員)