労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

立憲主義と統一戦線

 止まることを知らない“違憲包囲網”のひろがり。
 「一点共闘」という視点でみれば、キーワードは「立憲主義」でしょう。

 憲法学者の長谷部恭男氏は、6月4日の衆議院憲法審査会において、立憲主義について発言しています。
 それによれば、立憲主義は、「広い意味」と「狭い意味」の2つの意味があるとのこと。


 「広い意味」とは、「政治権力を何らかのかたちで制限する考え方」のことです。
 そして「狭い意味」とは近代はじめのヨーロッパで確立した近代立憲主義のことであり、この近代立憲主義に立脚する憲法硬性憲法であり、「基本的人権を保障する諸条項、民主政治の根幹にかかわる規定」は、「その社会のすべてのメンバーが中長期的にまもっていくべき基本原則」であって、時の権力者の考え方や立場からは「切り離されるべき」ものである、ということです。

 日本国憲法における立憲主義は、近代立憲主義と理解できます。
 日本国憲法の前文には、以下のような文章があります。

 《この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。》

 「かかる原理」とは、日本国憲法の基本原理、すなわち、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重、の3点のことです。
 つまり、この3つの基本原理は、《「その社会のすべてのメンバーが中長期的にまもっていくべき基本原則」であって、時の権力者の考え方や立場からは「切り離されるべき」もの》なのです。

 ただ、たとえば小林節氏のように、「第9条第2項の戦力不保持と交戦権否認は改正して、自衛隊憲法上も認めるべきだ」が、「これは解釈などではなく、憲法上の改正規定に則って実施すべきだ」という立場の人の立憲主義の理解は、長谷部氏のいう「広い意味」か「狭い意味」なのか、よくわからないところがあります。
 「基本原理だが変えてもいいんだ」という点に注目すれば「広い意味」ととれますが、「基本原理なんだから、変える場合は慎重に」ととらえれば「狭い意味」ともとれそうな気がします。

 「狭い意味」=近代立憲主義における《「その社会のすべてのメンバーが中長期的にまもっていくべき基本原則」であって、時の権力者の考え方や立場からは「切り離されるべき」もの》という点を素直に理解するならば、小林氏の立場は「広い意味」の立憲主義と理解するべきでしょう。

 先日紹介した南野森氏の立場も考慮すれば、戦争法案に反対している憲法学者立憲主義にたいするスタンスは、「広い意味」と「狭い意味」が混在している可能性があるような気がします。

 だとするならば、これは学習教育運動にとって重要な問題が投げかけられていると思われます。

 「一点共闘」の観点からすれば、「広い意味」であれ「狭い意味」であれ、あるいはあいまいさがふくまれている場合であれ、立憲主義の立場が戦争法案反対の重要な一致点となる。
 同時に、さまざまな「一点共闘」を本格的な「国民的共同」=統一戦線へと発展させるためには、「狭い意味」の立憲主義=近代立憲主義の観点が不可欠なのではないか。
 すなわち、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という、日本国憲法の3つの基本原理は、《「その社会のすべてのメンバー(=日本国民)が中長期的にまもっていくべき基本原則」であって、時の権力者(=安倍政権)の考え方や立場からは「切り離されるべき」もの》である。

 このように整理・理解することが可能であり、重要ではないかという気がします。

 だとすれば、憲法を活かした日本の実現をめざす、すなわち、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という、日本国憲法の3つの基本原理こそが、統一戦線形成の基本条件となるわけですが、このことにかかわって、勤労者通信大学基礎コースは「国民的共同をつくる場合の共同目標」として以下の3点をかかげ、この3つの共同目標が「大企業中心・アメリカいいなりの日本政治を変革していく手がかり」となるとのべています。

 1 日本の経済を国民本位に転換し、暮らしが豊かになる日本をめざす。
 2 日本国憲法を生かし、自由と人権、民主主義が発展する日本をめざす。
 3 日米安保条約をなくし、非核・非同盟・中立の平和な日本をめざす。

 この3つの共同目標は、日本国憲法の3つの基本原理を民主的改革の課題として整理し直したものと読みとることもできます。

 立憲主義という一致点で“違憲包囲網”をひろげにひろげていくとともに、立憲主義の理解を厳密に「近代立憲主義」としての共通理解に高めていくことが、今後の運動の前進にとってきわめて重要だと思います。
 その意味では、勤労者通信大学の各コースのはたす役割は非常に大きいといえます。
 当面する大闘争との関係では、やはり憲法コースを軸に受講者をひろげていくために奮闘したいと思います。   〈Y〉





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