「戦争法案」を許さず、憲法をまもる 国民的な闘いを発展させよう
労働者教育協会第55回総会アピール
労働者教育協会第55回総会アピール
5月15日、安倍内閣は「戦争法案」を国会に提出しました。政府は「平和安全法制」といいますが、憲法九条を根本から否定し、日本を「海外で戦争する国」に大転換させるものにほかなりません。
法案は、第1に、これまでできないとされた「戦闘地域」における自衛隊の兵站活動を可能にさせ、第2に、PKO(国連平和維持活動)のみならず、国連が統括しない場合も含め、任務の遂行での武力使用を容認し、戦乱が続く地域での自衛隊の治安維持活動を可能にさせ、第三に、日本に武力攻撃がなくとも、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」(武力行使の「新三要件」)と政府が一方的に判断すれば、集団的自衛権の行使=武力行使を行うことができるようにするものです。
憲法とのかかわりから、「専守防衛=日本への武力攻撃がなければ武力行使は許されない」としてきた歴代政権の憲法解釈を一内閣の閣議決定で180度転換させ、憲法を踏みにじって、日本を「戦争しない国」から「海外で戦争する国」に根本的に変える「戦争法案」を国会に提出したことは、立憲政治を根本から破壊するものであり、断じて許されません。
さらに、安倍内閣は「戦争法案」の強行を前提に、来年7月の参議院選挙後、早ければ来年の秋、遅くとも17年の春ぐらいに改憲発議と国民投票による明文改憲の具体的な計画を企てています。まさに憲法の戦後最大の危機が訪れています。
このような「海外で戦争する国」への転換、明文改憲の危機のおおもとに日米同盟の新たな段階への転換があります。日米両政府は、4月27日、新たな日米軍事協力の指針(ガイドライン)を策定し、翌28日、首脳会談を行い、「日米共同ビジョン声明」を発表しました。「アジア太平洋地域およびこれを越えた地域」で「切れ目のない日米共同の対応」が強調され、「世界中の有事」に米軍と肩を並べて武力行使することが合意されたのです。日米同盟(日米安保体制)と憲法9条の矛盾が決定的になっています。
「戦争法案」の審議もしないうちから、アメリカに対して「戦争法案を今夏までに成立させる」と約束したことは、議会制民主主義を壊すものです。
こうした戦後最悪の強権内閣による憲法への戦後最大の攻撃・暴走にたいし、国民の不安と反発が急速に高まり、国民的共同が大きく広がっています。5月3日の横浜での憲法集会は、これまでにない共同の前進で3万人を超える大集会になりました。「戦争法案を許すな。憲法を守ろう」という一点で思想信条の違いを超えた国民的共同を発展させ、安倍内閣のたくらみを打ち破らなければなりません。戦争する国づくりとしてすでに進められている沖縄の辺野古への新基地建設、日本全国での基地機能の強化、日米共同演習や軍備・武器輸出の拡大・強化なども大問題です。まさに歴史的な闘いが始まっています。
学習教育運動は、この歴史的闘いの発展に寄与していかなければなりません。労働者教育協会は、2008年以来、「憲法、貧困、安保」をキーワードとする総学習運動を推進してきました。いまの歴史的攻防の中で、憲法学習を旺盛に行い、情勢の深い理解とともに、日本国憲法の歴史的意味の再確認を進めていきます。また、貧困の社会的拡大が平和と民主主義を内側から危うくするという歴史的教訓をふまえて、生活や雇用と憲法の基本原則との関連を深めていきます。そして、憲法問題の本質的要因が日米安保体制=日米同盟にあることを明らかにしていく決意です。
闘いの前進と勝利の展望を切り開くには、改めて日本国憲法の原点、武力によらない平和、国際的連帯と外交努力による平和の構築の意義を国民的合意にしていかなければなりません。この合意がどこまで広がるかが勝利の展望に大きな意味を持ちます。私たちは、この合意づくりの推進役になる「憲法と安保に強い活動家」を育てる学習教育運動に全力をあげていきます。
「戦争法案」を許さず憲法をまもる国民的闘いの発展は日本社会の民主主義的前進にきわめて大きな意味を持っています。私たち労働者教育協会と学習教育運動は、この歴史的闘いに私たちの存在意味をかけて参加し、その発展に寄与していく決意です。
2015年5月24日 労働者教育協会第55回総会