憲法コースの受講生からだされた質問と解答を掲載します。
Q 「人身の自由」(12ページ)の「人身」とは何ですか。
A 人身とは人間の身体のことです。人身の自由は、身体の自由、あるいは身体的自由権とも呼ばれます。
人身の自由は、自由な人間の第1の条件ともいうべきものです。
人身の自由が
基本的人権として位置づけられるようになった背景には、「警察や検察権力によって国民の人権が侵害された歴史」(テキスト216ページ)があります。
これはヨーロッパでも日本でも事情はだいたい同じですが、ヨーロッパが近代市民革命で人身の自由を獲得していくのとちがって、日本は近代に入っても
基本的人権の保障には「法律の範囲内」(
大日本帝国憲法)という制限がつけられていました。
とくに
治安維持法などの弾圧法規は、たとえば作家の
小林多喜二が
特高警察の拷問によって虐殺されるなど、「暴虐をきわめた戦前の警察の取調べ、拷問、糾問主義的な刑事司法」(テキスト56ページ)がまかりとおっていたのです。
このような歴史への反省から、
日本国憲法は人身の自由をきちんと位置づけて保障しています。
奴隷的拘束および苦役からの自由、刑罰執行以外の意に反する使役禁止(徴兵の否定)(第18条)、法定手続の保障(第31条)、現行犯逮捕以外での、令状なき拘束・逮捕の否定(第33条)、令状なき捜索・押収の否定(第35条第2項)、住居の不可侵(第35条)、などです。
人身の自由について、
憲法上、これほどくわしい規定を置いている国はあまりありません。