新・憲法コーステキストでは、第2章を「日本国憲法と日米安保体制のせめぎ合い」として、安保批判を全面的に展開し、日米安保のしくみについてもくわしく解説しています。
そして、ただ批判するだけでなく、ポスト安保、すなわち、安保をなくしたあとの安全保障の展望についても、アジアにおける平和のルールづくりとの関連で展開しています。
アジアにおける平和のルールづくりについては、旧テキストでも一定程度の展開がありますが、新テキストでは現在の到達点をふまえて、ポスト安保と結びつけたところが特徴といえるでしょう。
日米安保のしくみについては、基地国家日本、日米共同作戦、日米経済協力の3つの面から整理し、解説しています。
まず基地国家日本。
わずか0.6%の国土面積に米軍専用基地の74%が集中している沖縄をはじめとして、世界的にみても在日米軍基地はいかに異常な状態にあるかを解説しています。
そのうえで、在日米軍はけっして「抑止力」などではないし、日本の防衛とは無関係だという実態についても説明しています。
そして、異常な基地国家が可能にしている、米具基地と米軍のための『特権』を保障している日米地位協定について、その内容と特徴を注に落としてくわしく解説しています。
日米地位協定について、その名前は聞いたことがあっても、内容についてはよく知らないという人が多いと思いますので、あえて突っ込んで記述しました。
地位協定の内容がわかれば、基地国家の異常さがよく理解できることでしょう。
日米共同作戦については、日米同盟が日本有事をとびこえて、「世界の中の日米同盟」として位置づけられるようになり、そのために、自衛隊の役割も変質し、海外での任務が「付随的な任務」から「本来的な任務」に格上げされ、防衛庁が「省」に昇格し、海外派兵型の「軍隊」になろうとしていることを明らかにしています。
日米経済協力。
これは、私たちが生活の側面から安保の問題を理解できる側面ですから、TPP問題や原発問題もふくめて丁寧に解説しました。
日米同盟と「構造改革」、とくに労働法制の規制緩和が密接に関連していることについて、新テキストでは以下のように記述しています。
改行なしの文章ですが、読みやすくするために、あえてセンテンスごとに改行しました。
あと、注は省略しました。
《日本社会の格差と貧困を耐えがたいものにした「構造改革」は、1989年の「日米構造問題協議」や93年の「日米包括経済協議」を起点として、アメリカ側からの規制緩和と市場開放要求が本格化したことから具体化されました。
94年から毎年「年次改革要望書」によってアメリカの要求がとりまとめられ、日本政府に提起されたのです。
こうした動きのなかで、95年に日経連(当時)が「新時代の『日本的経営』」をきめます。
これ以降、終身雇用、年功制などを縮小・解体し、正規の労働者を一部のエリート社員に限定し、圧倒的な労働者を契約社員、パート、派遣などの非正規雇用にする雇用政策が日本政府によって全面的に推進されます。
これを受けて、99年の労働者派遣法の改悪で派遣業務が原則自由になり、03年の派遣法改悪で製造業も解禁されることになります(04年実施)。
この雇用構造の「改革」を基礎に、96年から橋本「構造改革」がはじまり、2001年からの小泉「構造改革」が本格的に実行され、日本はかつてない貧困と格差の社会になったのです》。
青年の貧困はけっして自己責任などではなく、日米財界の合作、日米経済同盟によってもたされたものだということが明らかにされているわけです。
こうした記述は、労働者教育協会=学習の友社のいくつかの出版物では、これまで一定の言及をしてきているのですが、その成果を新テキストに盛り込んだわけです。
もちろん、全面展開といっても、テキストの1つの章のなかでの展開ですから、ポイントを絞った整理になっています。
ですので、安保についての本格的な学習は、労働者教育協会編『これでいいのか日米安保』などで深めてもらえればと思います。〈Y〉