労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

関野秀明さんの記念講演

 イメージ 1今日は3日目の全体集会での経済学者の関野秀明さん(下関市立大学)の記念講演を紹介します。
 といっても、このときもドタバタ走りまわっていて、話をほとんど聞いてません。
 録音の全体を聞く余裕がいまないので、少しは聞きますが、先日の全体的な報告と、当日配布のレジュメをもとに簡単にのべる程度になります。

 講演テーマは「現代の政治課題と『資本論』(7) 生活保護バッシングと有期労働法制改悪を考える─相対的過剰人口論に学ぶ(2)」。
 ほぼ同名タイトルの文章を『学習の友』2012年10月号に掲載していますが、その内容もふまえながら、さらにくわしく展開しています。

  (7)とか(2)となっているのは、『学習の友』2011年7~12月号に掲載された連載講座「現代の政治課題と『資本論』」の補足を兼ねるかたちになっているからです。
 相対的過剰人口論のところは1回で終わってしまいましたからね。

 講演は、タイトルのとおり、生活保護バッシングと有期労働法制改悪の問題を軸に、『資本論』の内容にも触れながら、貧困の真の原因と社会保障財源の確保について科学的に解明しています。
 レジュメでも資料を豊富に使用し、マルクス資本論』の引用文も多数、掲載しているので、説得力があります。

 実は関野さんは、前日夜の「深まる交流会」から参加され、集会参加者のみなさんと交流していました。
 そのことに気づいた司会者は、全体のまとめのところで、ここぞとばかりに関野さんに登壇するよう促しました。

 「関野さん! ぜひ明日の講演の予告篇を1分でお願いします!」

 かなりの無茶ぶりに戸惑っておられましたが、明日、何を話すかということの一端をお話しくださいました。

 1つは、講義などで学生から、「貧困の原因が社会にあることはわかったけど、本当に自己責任はないのか。あるとしたら自己責任は何%くらいあるのか」と質問され、答えに詰まってしまったことをずっと気にしていて、明日、その答をだすので、みなさんも何%か考えてほしい。

 もう1つは、最後の5分くらいを使って、自分自身の学習にたいする思いを話したい、それは長久さん(現地実行委員会事務局長・岡山県学習協事務局長)からの要望でもあるので、と。

 最初の問題の答は、すでに10日(水)にのべていますが、該当部分をあらためて引用します。

  《「『自己責任論』は落とし穴をつくった人たちが『落ちたのはお前の責任だ』といっているようなもの。責任は100%落とし穴をつくった側にあり、落ちた人間の『自己責任』は0%だ」と強調し、参加者に勇気と自信を与えました。》

 なかなか明快かつ痛快な解答です。
 少しつけ加えると、自分がどういう仕事を選ぶかとか将来の夢とかいう部分では「自己責任」が語られる部分があってもいいかもしれないが、こと人間としての最低限度の生活ができない、フルタイムで働いても食っていけないなどということについては断じて労働者に「自己責任」などないのだ、ということです。

 私としては、後者の「最低限度の生活ができない、フルタイムで働いても食っていけないなどということ」がまかりとおるならば、前者の「自分がどういう仕事を選ぶかとか将来の夢とかいう部分」についても「自己責任」を課せられる条件が崩されていくことになるので、全面的に「自己責任」はないといってもいいのではないかと思います。
 少なくとも、現在のような深刻な貧困と格差がつくりだされてしまった状況においては。

 もし「自己責任」があるとすれば、憲法第12条に「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」とあるように、労働者・国民が団結・連帯して権利をとりもどし、さらに発展させるためのたたかいにたちあがるということが「階級」としての「自己責任」なのではないか、と思います。

 関野さんの話から少し離れてしまいましたので、もとにもどします。
 最後は、関野さん自身の学習にたいする思いです。

 《現実を知ったり、現実の奥底にある法則性を知ることが大事であり、そこがあいまいだと「あんまりひどい貧困はよくないけど……」「どっちもどっち」といった煮え切らイメージ 2ない態度をとることになってしまうが、やはり「知る」ということをつうじて、「自己責任」が0なんだとわかったときに、はじめて「まあまあ」ということではなく、躊躇なくたたかうことができるのではないか。
 気の弱い人間こそ、「知る」ことをつうじて、貧困の真の原因がいったいどこにあるのかを正しくつかめば、迷いなくたたかいに立ち上がることができるのではないか。
 そこにこそ、学ぶことの意義があるのだと、私は思います。》

 こうのべて、関野さんは講演を終えました。
 
 集会が終わってからあいさつして、少しお話しすることができました。
 講演のときから思ってましたが、非常にまじめで誠実で、正義感のあふれる好人物でしたね。
 まだ40代前半で、私と1歳しか変わりません!
 こういう研究者がいるのは本当にうれしく思います。  〈Y〉