労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

「社会」とは何かについて議論─御茶ノ水サークル

 6月30日(土)午後、全労連会館5階の労働者教育協会会議室で、勤通大御茶ノ水サークルの2012年度第2回学習会を開催しました。
 
 今回から某新聞社勤務のM・Sさんが新しくメンバーに加わりました。
 
 今回の学習範囲は基礎コーステキスト第2章「社会のしくみとその歴史」
 
 3節に分かれているので、節ごとにレポートを分担し、全体1時間30分ほど報告時間をとり、休憩をはさんで討論しました。
 
 司会の裁量で、今回はとくに「社会」とは何か、という点の議論に力を入れました。
 テキストには「生産をもとにした人と人とのつながりの総体」と書いてありますが、それぞれの人にとって「社会」とは何か、自分と「社会」とのかかわりを具体的に考えることが大事だという理由からです。
 
 それぞれがこの点について発言し、おおむね、仕事(労働)に費やす時間がそれぞれの生活のなかで主要な時間を占めていることが明らかになりました。
 余暇をどういうふうに過ごしているかという話も少ししましたが、その余暇の過ごし方だって、労働力を売って手に入れる賃金の額や、労働時間がどのくらいかによって左右されますから、「物質的生産が社会の土台」とか「生産をもとにした」という点がかなり具体的にみえてきて、実感がわいてきます。
 
 最近では新自由主義イデオロギーの蔓延で、若者を中心に「自己責任」論が内面化し、なかなか職場が定着しない非正規労働のひろがりのなかで人と人のつながりが希薄になり、「社会」と自分とのつながりがみえにくくなっている人も増えています。
 いい方をかえれば、「人と人とのつながり」の中身が問われている、ということにもなります。
 このへんのことが、議論をつうじて浮き彫りになり、「経済関係が社会の土台」「社会的存在(のありよう)が意識を規定する」といった命題の意味を具体的につかむことができたように思います。
 
 新しいメンバーのM・Sさんは、いまの職場に来る前は日雇い派遣の仕事をしていて、毎回ちがう現場にいっていたということもあり、人間関係の希薄さということもそうだが、「ノルマをテキパキとこなしていくような仕事のやり方よりも、1つひとつの仕事をこだわりをもって丁寧にやりたいという意識が強い」という一面もみせてくれました。
 
 どういうことか具体的に、牛丼の吉野家で働いてたときのことを例に説明してくれました。
 吉野家では注文をとってから盛りつけ、配膳、片づけなどをとにかく一定の時間内にこなしていかなければなりません。
 そのさい、たとえば何かいいたそうにしているお客さんがいても、ノルマをこなしていくことで頭がいっぱいになっていると、そうしたことへの対応は後回しになってしまうので、自分はそういうのがイヤなんだ、といっていました。
 そうしたお客さんにはいち早く気づいてあげたいし、配膳のさいもとにかく機械的に置いていくのではなく、丁寧に、そしてできれば笑顔も忘れずに、「お待たせしました!」と元気よく声をかけながらもっていってあげたい、ともいってました。
 
 いやいや、なかなかいいこだわりだと思います。
 もちろん、どこの職場も労働者1人ひとりが抱えている仕事が多いですから、M・Sさんのようなこだわりはなかなか通用しない面もありますが、どんなに忙しくても、M・Sさんのいわれるような「気配り」の姿勢は忘れないようにしないといけないなと思います。
 
 M・Sさんの場合は、「だから私は特定の職場にいることができないのかもしれない」といってました。
 そういう面もあるかもしれませんが、労働者1人ひとりはさまざまな個性をもっていますから、それぞれの個性を生かして、よりよい「チームプレー」ができるように采配するのも会社の役割だと思います。
 使いこなせず浮いてしまうようであれば、その会社がへたくそなのか、あるいはその人がその会社にむいてないということと割り切るしかないと思います。
 
 学習会の話にもどします。
 
  「社会」の話で盛り上がったあとは、社会発展史のイメージをつかみやすくするため、司会が「人類史のイメージ」を図式化した資料をつくり、みんなに配布しました。
 具体的には、このテキストでは、人類の誕生は600~700万年前、階級社会の誕生は6000年前、資本主義の誕生はだいたい500年前、ということですので、テキストの趣旨にそって、①人類史の大半(599万4000年)は無階級社会であり、階級社会は一時的なものに過ぎないこと、②階級社会大半(5500年)は共同体の縛りを残していた前近代(資本主義以前)の社会であり、資本主義は人類史全体でも階級社会史においてもわずかな一時期に過ぎない、ということをイメージできるような図を2つつくりました。
 このことをつうじて、階級のない状態や共同体での生活が人類にとって本質的な位置を占めることが確認でき、同時に、資本主義の積極面(生産力の飛躍的発展、近代的な独立した個人の誕生)を組み合わせることで未来社会をつくっていくというのは、きわめて理にかなっているんだという補足説明をしました。
 
 後半部分はあまり深められた議論というふうにはなりませんでしたが、「ここで学習したことを日常的な労働や生活の場でどう生かしていくのかを1人ひとりが考えていく必要がある」という発言がでるなど、それなりに実りのあるやりとりになったと思います。
 
 次回は8月11日(土)15:00~、会場は同じです。
 次回は第1回テスト対策をメインに、それに先だって短時間、オプショナルとして『学習の友』6月号「特集:橋下さんがいいな、と思うあなたと」の読み合わせ学習をします。
 
 オブザーバー参加もふくめて、新しい参加者大歓迎です。
 希望者は勤労者通信大学kin@gakusyu.gr.jp(担当:吉田)までご一報願います。  (御茶ノ水サークル運営委員・三島陽一)