労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

第3期民医連平和学校卒業式

 12月10日(土)~11日(日)、第3期民医連平和学校の卒業式がひらかれました。
 
 開校式の様子は、以下のクリック↓
 
 この平和学校は、4年前の第1期開校以来、勤通大憲法コースをカリキュラムに組み込んでくれています。
 
 その関係で、開校式では憲法コースのガイダンス、卒業式では憲法コースの講評をやることになっていますので、日曜ではありますが、行ってきました。
 行ってきましたといっても、会場は全労連会館2階ホールですが。
 
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 卒業証書授与の様子。
 左が校長の吉田万三さん(民医連副会長)。
 携帯写メなので、写り悪いですが。
 
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 閉会のあいさつをする吉田万三さん。
 やはり写りが悪い。。。
 
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 最後は集合写真の撮影です。
 
 
 卒業式での講評は、原稿の一部をはしょりましたが、だいたい以下のようなことを話しました。
 
(以下、講評原稿より)
 
 これから吉田が2人つづきますが、別に親戚ではありません(笑) ※これはアドリブ
 
 数ヵ月にわたる憲法と平和をめぐる学習、本当にご苦労様です。地道に学習を重ねてこられたみなさんの努力に、心からの敬意を表したいと思います。
 提出されたテストや修了レポートを拝見して、本当にできのいいものが多くて、感心しました。
 
 とくに注目したのは修了レポートです。
 修了レポートはテーマが2つあり、どちらかを選択するのですが、通常は②を選ぶ方が6~7割を占めています。
 しかし、みなさんは8割以上の方が①の論述形式を選択していました。
 しかも、ほとんどの方がかなり高い水準でまとめられていたのには驚かされるとともに、とても頼もしく思いました。

 実は多くのみなさんが選ばれた修了レポート①のテーマは、改憲問題を歴史的にふりかえるという側面をもっており、かなり高度で難しい問題です。
 というのも、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否定を謳った9条を改悪して、日本をアメリカとともに「戦争ができる国」に変えようという改憲派の野望は、ソ連崩壊・冷戦終結という世界史の新たな段階に見合ったアメリカの世界的軍事戦略の修正がその背景にあり、20年くらいの歴史的スパンで考えるべき問題だからです。
 もちろん、勤通大としてはテキストをきちんと読めば解答できると判断して出題しているのですが、人間でいえば赤ん坊だった人が成人するという長い期間の歴史をまとめるわけですから、論文はおろか1冊の本がかけるくらいのテーマといっても過言ではありません。
 おそらく大半の方が独習だと思いますが、独習だけでこれだけの文章をまとめることができるとは、さすがは日ごろから熱心に平和活動にとりくんでいる民医連のみなさんだと、あらためて実感した次第です。

 それからもう1つ。
 これは民医連のみなさんだけでなく、憲法コースが2006年に開講して以来、もっとも多い感想の1つです。
 それは立憲主義についてです。
 立憲主義はこのテキストの「はじめに」の部分と第1章で学ぶのですが、憲法で権力者を縛り、憲法に従った政治を権力者におこなわせることを立憲主義といいます。
 このテキストでも使っている亡くなられた作家の井上ひさしさんの言葉「憲法は権力者にたいする国民からの命令書だ」というのが有名ですが、この立憲主義について「目からウロコが落ちた」というような感想がものすごくたくさん寄せられています。
 多くの国民にとって、「憲法や法律は国民を縛るもの」という考え方が支配的だったようで、これには私たちも正直びっくりしました。
 同時に、多くの受講生がこの立憲主義に感動しているんですね。
 つまり、憲法こそが私たちのたたかいの拠り所であること、その根拠が憲法自身に書かれていることがわかった、と。
 これはこれからのたたかいの発展にとってとても大事なことだと思います。

 この間の改憲攻撃は、立憲主義の観点からみて、明らかに問題があります。
 それは、戦後長い間、政権与党であった自民党が先頭に立って、日本国憲法の基本原則である第9条を中心ターゲットにした明文改憲を声高に主張してきたことです。
 これは「言論の自由」などという問題ではなく、明らかに立憲主義の原則に違反した行為です。
 為政者には、立憲主義原則から、その言動には憲法を基準に一定の制限がかけられるのです。
 改憲は、国民の側が要求したわけではないのです。

 自民党は、その結党以来、日本国憲法を敵視し、何度かにわたって大規模な明文改憲攻撃をかけてきました。
 しかし、テキスト第1章第4節などで学ばれたように、労働者・国民はそのつど、この攻撃をはね返してきました。
 そのため自民党は、明文改憲には慎重になり、とくに60年代以降は解釈改憲や立法改憲有事法制や特措法などで実質的に平和主義原則を空洞化させる)で対応してきました。
 しかし、アメリカと自民党政権がつくりだした安保・自衛隊体制は、もともと憲法と真っ向から矛盾・対決するものであり、いくら解釈や立法で対応しても、やればやるほど、ますます矛盾を激しくさせるだけです。
 この矛盾をもっとも反動的なかたちで解決しようとしたのが、この間の改憲攻撃なのです。

 しかし、この立憲主義には、罰則規定がありません。
 立憲主義だけでなく、憲法そのものに罰則規定がない。
 したがって、立憲主義違反を摘発するには、労働者・国民自身が世論と運動で包囲するしかないのです。
 つまり、立憲主義国民主権・民主主義は相互補完関係にあるのです。
 とくに「国民の不断の努力」を強調した第12条が大事です。
 条文はぜひあとで読んでください。

 ところが、「自民党政治NO!」という国民の期待を背負って誕生したはずの民主党政権は、国民の期待を裏切りつづけ、震災や原発問題への対応もふくめて、憲法の空洞化をすすめようとしています。
 9条問題でいえば、6月1日には、アフリカ大陸東部のジブチ共和国に、海外初の本格的な自衛隊基地が開設されました。
 自衛隊は2009年6月から米軍などと連携して、ソマリア沖で海賊対処活動をしていますが、これまでは米軍施設などを間借りしていました。
 活動の長期化と、今後のアフリカや中東での海外活動の拠点として、ODA(政府開発援助)予算から47億円もの資金を投じて基地を建設したのです。
 また、先月11月には「憲法審査会」が始動しています。
 このように、民主党政権のもとでも、自衛隊の海外派兵拡大による憲法第9条の空洞化、解釈改憲の危険性があります。

 みなさんが学ばれたように、こうした事態のおおもとには、日米安保=日米同盟の問題があります。
 日米同盟はいま、軍事同盟だけでなく、TPP(環太平洋連携協定)参加の動きなど経済同盟としての側面を強めています。
 対米従属の多面化、多様化がすすんでいるのです。
 同時に、このことが逆に安保を考える多様な糸口を私たちに提起しています。

 3・11以降、原発やTPPなどで国民的共同の運動が大きく前進しています。
 とくに、青年や女性たちは、これまでの社会や政治、生活のあり方をかなり深いところから問い直す動きを示しています。
 さまざまな国民的共同のたたかいをさらに発展させ、それをやがて1つの流れに合流させることができれば、日本の政治革新の展望を切りひらくことが可能な情勢になっています。
 憲法改悪の阻止と憲法を生かした日本の実現にむけたたたかいの発展、そしてそのためにも日米同盟との真正面からのたたかいが重要な時期にきているのです。
 平和学校で学ばれたみなさんが、学習の成果を生かして憲法の“語り部”として活躍し、日米同盟とのたたかいの先頭に立ってくれることを、心から期待しています。

 最後になりますが、修了証と一緒に来年度の入学案内を配付させてもらいました。
 ぜひ基礎コースや労働組コースなどを受講し、憲法についての理解をさらに深めて欲しいと願っています。
 以上、私のあいさつにかえさせていただきます。
 ありがとうございました。  (勤通大部長・吉田ふみお)