労働者教育協会のブログ

生きにくいのはあなたのせいじゃない。

「数の力」ばかり強調するのはおかしくないか?―勤通大受講生の質問から

 3年ほど前に事務局によせられた労組コース受講生からの質問と、それへの回答を掲載します。
 

★質問

 私の所属する組合は少数ではありますが、組合員全員参加での団体交渉をおこなうなど、強い団結力で活動しています。
 たんに「数の力」を強調するなら自公政権(当時)と同じであり、多くの少数組合の人たちの活動や運動を否定するのではありませんか?
 
 
★回答

 あなたが所属する組合の場合、組合員数としては少ないが強い団結力で活動しているということですね。 地道なご活動に敬意を表します。
 団交に組合員全員が参加するなど、組合員どうしの団結・結束の強さを感じます。

 労働者の「数の力」について、補足します。
 テキストでは、労働者の「数の力」と同時に、それが「恒常的な団結の力労働組合になることによって、労働者は資本家とはじめて対等に交渉できる関係にな」るとしています。
 つまり、「数の力」を「団結の力」に高めていくことが大事だと強調しているのです。
 ただたんに数が多ければいいといっているのではありません。
 まずその点をよくおさえておいてください。

 テキストには「戦後日本の階級構成の変化」という表が掲載してあります。
 2005年には労働者階級は人口比80.3%、資本家階級は人口比2.8%です。
 つまり、全人口のなかで労働者が圧倒的多数を占めているのです。
 もしこの80%に及ぶ全労働者がしっかりと団結してたたかえば、わずか2.8%の資本家はたちうちできなくなることでしょう。

 しかし現実には、労働組合の組織率は20%を切っています。
 こうした状況を打開し、真に労働者・国民が「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法第25条)をできるようにしていくためには、まずは組合員や組合活動家自身が、この「数の力」を「団結の力」へと高めていくことの重要性をしっかりととらえ直し、あらためて労働組合を強く大きくしていく目的意識的な努力の積み重ねが求められているのではないでしょうか。

 そのことを確認したうえで、上記の観点にしたがってコメントさせてもらうと、労働者の「数の力」というのは、労働組合に結集している人=組合員のことだけではなく、非組合員の人もふくめて、ということが大事だと思います。
 これには2つの側面があります。

 1つは、組合員を少数のままにしておくのではなく、組織を拡大していく努力の重要性です。この点は、すでに日々ご努力されていることと思います。

 もう1つは、現時点では組合に結集していなくても、共感を持ってくれる人をたくさんつくること、あるいはそこまでいかなくても、少なくとも反感をもたれたり、「敵対」関係になる人をつくらない努力の重要性です。

 あなたが所属する組合が、少数ではあっても、団交に組合員全員が参加するなどの強い団結力で活動していけるのは、組合員どうしの「団結の力」のみではなく、職場の労働者の支持があったり、あるいは反感や「敵対」の感情がほとんどないか、少なくとも団結を乱すほどの大きな潮流にはなっていないからという面もあるのではないでしょうか。
 非組合員もふくめた労働者全体が固く団結しているとはいえないまでも、ゆるやかな連帯、「心の団結」とでも言うような状況もおそらくあるのではないかと思います。

 少数でも団結の力でがんばっているとはいえ、労働者・国民の暮らしをよりよくしていくためには、さらに労働組合を強く大きくしていく必要があります。
 そのためには、上記のような側面にも目を向けながら、「団結の力」をより大きくしていく努力が大切だと思います。

 道はけっして平坦ではありませんが、すでに発揮されている「団結の力」を基本にしていけば、必ず実現できることと思います。
 「知は力」です。
 労働組合コースで学んだことも力にして、これからもがんばってください。 (勤通大部長・吉田ふみお)